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SF読まなきゃ(105) ジャック・ヴァンス『竜を駆る種族』

img003.jpg はるかな未来、人類最後の生き残りが住むさいはての惑星エーリスでは、風雲急を告げていた。バンベック一族の住むバンベック平を幸いの谷の一族カーコロが狙っていたのだ。異星の爬虫類種族を育て、さまざまな竜―――阿修羅や金剛や一角竜から成る軍隊に仕立てたバンベックとカーコロは、まさに一触即発の状況。しかも、エーリスを狙う爬虫類型の異星人ベーシックが襲来しようとしていたのだ!名匠のヒューゴー賞受賞作。

 ちょ、超面白い!興奮した!

 異星を舞台にした戦争小説。当初は二つの勢力の抗争を描き、さらに、そこに異星から、トカゲ軍団が降ってくる。さまざまに移り変わる情勢がスピーディーで、読者に息つく暇を与えない。作品も中篇ということで、無駄のない締まったできになっております。

 なにより、竜の名前がかっこいい。訳者あとがきによれば、伊藤典夫氏の『終わりなき午後』を参考にしたそうです。阿修羅、金剛、羅刹、韋駄天、青面夜叉……。うーん、キーボードを叩いて変換することすら快感な、かっこよい名前だ。古風な文体もすばらしい味を出していますねえ。

 竜はベーシックを、ベーシックの乗り物は人間を品種改良したものだそうですが、双方の共食いというか、同人種での殺し合いには、背筋が寒くなる思いです。相手の巨人と、味方の竜との激突とか、戦闘もみどころいっぱい。楽しすぎました。

 バラモンと呼ばれる人々が出てくるのですが、昨日のディックの相対主義者みたいな人々でした。けれど、彼らは人間にいっさい手出しをしない中立をつらぬいている。相対主義の悪いところは、自分の主義や立脚点なんかのバックグラウンドすら、なくなっちゃうところだと思います。善悪すら否定しちゃう考え方ですから。その点、バラモンはそこで煩悶しているようですが。可哀想な人たち。
 バラモン、ベーシック、エーリスの人々の理解には到底及ばない隔絶。さすが、名篇『月の蛾』を書いた人だなあと思いました。

 本屋を数軒、回ったのだけれど見つからず、しかたなくアマゾンで購入したのですが、けっこう売れているのでしょうか?こういった名作を今後も、どんどん復刊してほしいものです。
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