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SF読もうぜ(142) シオドア・スタージョン『夢みる宝石』

img073.jpg 家出少年のホーティがもぐりこんだのは、普通でない人間たちが集うカーニヴァル。団長のモネートルには奇妙な趣味があった。宇宙から来た不思議な水晶の蒐集と研究だ。水晶たちが夢をみるとき、人や動物や植物が生まれる―――モネートルはそれを利用して、己の野望を果そうとしていたのだ。そのことを知ったホーティやカーニヴァルの団員は、恐ろしい運命の渦に巻きこまれていく。幻想SFの巨匠がつむぎだす珠玉の名品。

 いやー、面白かったですー。

 前に『人間以上』を読んだときにも感じた、なにか「凄み」のようなものを、また感じました。

 『人間以上』同様、虐待される子ども、社会から疎外された人間が主人公です。ミュータントの悲哀というものが感じられて、いいです。最初はジュブナイル的な展開なのかなあ?と思いつつ読んでいましたが、途中から様相が変わってきて、人類の憎しみと、愛が絡んだ物語になっていきました。ジーナとホーティの心の連帯が美しいです。

 「宝石が夢を見る」という非常に幻想的な設定も美しい。水晶が結婚する云々のところは正直、よくわからない部分もあったけれど、ホーティの体の変形とか、そういうSF的な部分が効果的に使われていて、面白かったです。

 途中のカーニヴァルの様子は、江戸川乱歩的な面白さがあって、いいですね。「フリーク・ショウ」というのは、昭和初期の見世物小屋みたいなものなんでしょうか。ブラッドベリの『何かが道をやってくる』という作品でも、同じような描写が見られますが、アメリカ人にはサーカスというのは特別なものがあるんでしょうね。

 宝石と意思が通じない、宝石と人間は同じ世界に存在しながら、別個の世界観を持っている。ここのところの、不可知性が最後まで貫かれていて、そこも、また一つの「凄み」であるなあと思いました。確かに名作です。

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