SF素人が空想科学小説に耽溺するブログ。
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◎「タフ再臨」
ス=ウスラムに戻ってきたタフは、自分とミューンを主人公にしたドラマが大ヒットしていることを知るとともに、ス=ウスラムが再び危機的な状況に陥っていることを聞かされる。
とにかくス=ウスラムの人々の頑迷さにはイライラさせられます。でも、大衆っていうのはこういうものだし、僕だってそうなのかもしれない。個人個人はどうであれ、日本人は集団になると暴走したりもするし、ホントにス=ウスラムと状況が似てるなあ。のうのうと暴きたてを行うタフと、メディアの前でタフとの関係の偽装に走るトリー・ミューンの様子がステキ。政治に何もかも求めすぎるのもよくない、国にたよりきりで個人が要求するばかりの社会じゃいけねえよなあと、ふと思いました。
○「魔獣売ります」
惑星タンパーのパブで、タフは一人の男に声をかけられる。男はライロニカで獣を闘わせる競技を行う十二高家のひとつ、ノルン家の獣匠長だった。彼は「魔獣」を注文するが・・・・・・。
前巻でタフを「あこぎ」と紹介するのは間違いじゃないかと思ったのですが、間違いじゃなかったです。早川さん、すみません。たしかに面白いのだけれど、やっぱりタフの性格の高潔なところが好きだったので、こういうお金に走ったようなことをされると少し残念。
○「わが名はモーセ」
レストランで食事をとっていたタフは暴漢に襲われる。愛猫ダックスのおかげで難を逃れたタフだが、自らが襲われた理由が冤罪とあっては、黙っていられない。タフは暴漢の出身惑星チャリティへと向かう。そこではモーセと名のる人物が環境戦争をしかけ、都市住民を自らの配下におさめていた。
これも面白いのだけれど、これまで僕が頭の中で培ってきたタフ像と違ったので・・・・・・。まあ、こちらのほうが年代的には先に書かれたとはいうものの、責任もって書き直せばいいのに・・・・・・と本編とは関係ないところが気になっちゃいましたね。でも、河を赤く染めたり、蛙が襲ってきたりするところは面白かった。
☆「天の果実」
再度ス=ウスラムに戻ってきたタフは艦隊に取り囲まれる。艦隊が彼を待ち受けていたのは宰相となったトリー・ミューンの差し金だった。トリー・ミューンは超能力猫ブラックジャックと共に方舟に乗り込んでくるが・・・・・・。
ス=ウスラムのお話の集大成。人口が増えすぎちゃって、周囲を侵攻する「拡張主義」なるものも幅を利かせ始めるし、大変な時に戻ってきちゃったタフ。なんにも考えないでバンバン人口増やし続けたス=ウスラム人についにタフも切れちゃいました。抜本的な改善として、ス=ウスラム人の産児制限に踏み切ります。最終的には人間が神のごとき振る舞いをしていいのか?というテーマが、タフとトリー・ミューンの前に立ちはだかりますが、やはりベスト、ベターな選択を自らが下さなければならないときもある。そして、それが人の上に立つものの宿命なのでしょうか。人類の人口が増え続ける中、産児制限は今考え始めなけらばならない問題なのかもしれません。
総評:シリーズ通して楽しめました。なんといってもキャラクターの造形が巧いですよねえ。それから、訳もみごとだったんじゃないかなあ。タフの口調といい、トリー・ミューンの口調といい、それから各生物たちの名称といい、物語を構築する部品に気配りが行き届いていて嬉しかったですね。ただ、惜しむらくはタフの性格が一貫していなかったことですかね。日本版でもたった二巻の短さで、性格がぶれてるのは単純に作者の手落ちというか、怠慢のように思えます。まあ、これも傑作ゆえに見えてしまう弱点でしょう。
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