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SF素人が空想科学小説に耽溺するブログ。

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SF読もうぜ(233) フレッド・セイバーヘーゲン『バーサーカー 赤方偏移の仮面』

img176.jpg 遥かな過去、いずことも知れぬ星間帝国の間で熾烈な戦いがくるひろげられた。すでに死に絶えた太古の戦略家たちは、かつて、敵に損害を与えるための無作為因子として、生あるすべてを破壊するようプログラムした巨大な恒星間戦闘要塞〈バーサーカー〉を建造し、宇宙に放っていた。この殺人機会軍団が果てしない流浪のすえ、人類の星間帝国を発見した。かくして人類対〈バーサーカー〉の戦いの火ぶたは切っておとされた!

「無思考ゲーム」

 
太古の戦略家が敵を攻撃するための無作為因子として放ったバーサーカー。彼らの命は生命体を皆殺しにすること。そんなバーサーカーに攻撃されたフォックスグローヴ号の乗員は、時間かせぎに船に搭乗させた異星動物とバーサーカーにボードゲームをさせることとなる。

 最後の勝利の鮮やかさが、なかなかいいですね。バーサーカーって、頭があんまりよろしくない。

「グッドライフ」

 
バーサーカーの捕虜となった数人の男女。彼らがそこで会った人間は・・・・・・。

 人間としての尊厳を忘れ、というより、そんなものを持つことも許されずバーサーカーに育てられた男。ただただ、哀れです。

「理解者」

 
ヘロンは数々の名画と共に重要文化財をイプシロンに疎開させようとする途中で、バーサーカーに捕えられた。

 絵を描くということは、真実を写し取ろうとすることなのだろうか・・・・・・。画家の悲痛な叫びが頭の中にこだまします。

「和平使節」

 
バーサーカーのもとへ、単身乗り込んでくる男。彼は「平和の使い」として、殺戮機械の船を訪れたのだ。

 最後の気のきいたラストがいい。この巻の中ではベストだと思いました。

「宇宙の岩場」

 
詩人ミッチェル・スペインはバーサーカーとの大決戦のための作戦に参加することになった。それは、偉大な司令官カールセン率いる作戦だった。

 むごいなあ。カールセンの恋人の扱いが可愛そうです。悲劇に終って、逆にほっとする心理状態になりました。

「Tとわたしのしたこと」

 
目が覚めるとわたしは皆に取り囲まれていた。彼らの目は冷たくわたしを見下ろしている。

 うーん、結局、借り物の物語のように思えてくる。二重人格の物語は素晴らしいものが多いんでねえ・・・・・・比べちゃうんですよね。

「道化師」

 
「許可なき者のみ立ち入りを求む」――この張り紙をしたおかげで「ふざけ屋」は逮捕され、流刑にあうこととなった。彼は流される途中でバーサーカーに拿捕される。

 ハーラン・エリスンの「悔い改めよ、ハーレクイン~」にちょっと似ていますね。ただ、人々の単純すぎる反応とか、物語にすごみがないのが逆に哀しくなってくる。

「赤方偏移の仮面」

 
異母兄の陰謀で仮死状態となったカールセン。そのカールセンを亡き者にしようとバーサーカーは、その棺のある船に暗殺者をもぐりこませる。

 表題作。確かにバーサーカーが人間の仮面を剥ぎ取って暴れだすシーンなど、おっと思いました。

「狼のしるし」

 
牧夫は星々に祈りをかけた。狼を殺してください。そして、その空からバーサーカーはやってきた。

 なかなか面白い。しかし、都合よくそんなところに反撃する機械はねえんじゃねえかい?と思ってしまいます。

「軍神マルスの神殿にて」

 
カールセン救出に向かった新型宇宙船。しかし、狂信者たちが彼らの邪魔立てを企てる。

 宇宙での中世風世界というのはスター・ウォーズみたいです。剣闘士の登場というのも今後の展開に生きてくるのかなあ。

「深淵の顔」

 
カールセンは宇宙船の中で生きていた。彼は宇宙船の外にいる人物の示す言葉をどう判断すべきか迷っていた。これは悪魔の囁きか、それとも救いの手か?

 バーサーカーが人間の真似をするようになって、なんだか巧妙な手を使うようになってきました。カールセンがなぜ重要人物なのかはこれ以降で判明するのでしょうか。

 総評:うーん、全体的に低調。ベストは「和平使節」ですね。バーサーカーの間抜け振りが、物語に緊迫感をもたらさないのが、そこまで楽しめないゆえんでしょうか。なんか、可愛いく思っちゃうんですよねえ。なんの感情もなく襲ってくる機械軍団という設定はすごいけれど、エピソード一つ一つが短くて物足りないし、ストーリーもなにかの借り物だし、たいしたことないように思えました。でも、2001年の時点で六刷とけっこう増刷を繰り返しているので、僕の受容範囲をはずれているだけかもしれません。あと、表紙が素晴らしいですね。
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