◎
『降りる』
スーパーにて、買い物を終えた「彼」。本を読みつつ階下へ降りる彼だったが、そこには際限ない下降の旅が待っていた……。
『リスの檻』に似たものがありますね。こういう不条理小説のようなものは大好きなので面白かった。ただ、これはいつも思うんだけど、たまにはオチをつけてもいいと思うんだけど。毎回、このパターンじゃなあ。
△
『争いのホネ』
マルタは夫のテディーとの争いが絶えない。それは、夫が親戚を邪険に扱うから……。
うーん、気色悪い。あまり、面白い話ではないなあと思った。
☆
『リスの檻』
ある部屋に閉じ込められている一人の男。何者がどのような目的で、彼をこのような目にあわせるのか?
最初、読んだときは衝撃でした。けれど、こういう手は一回きりにしたほうがいいと思うなあ。何回も繰り返されると、ちょっと食傷気味になるし。
○
『リンダとダニエルとスパイク』
想像上の恋人ダニエルの子を妊娠したリンダ。彼女は息子のスパイクに愛情を注ぐ。
気持ちわるーい。おえー。
○
『カサブランカ』
共産陣営の落とした核爆弾によって、アメリカが壊滅した日以降、カサブランカで一組の夫婦を待ち受ける受難。
手のひらを返したように応対する住民たちに腹は立つけど、まあ、当然の報いなのかなあ?日本人もあまり金にものをいわせてアレコレやってると、いつかしっぺ返しを食らうなあと思いました。ブラッドベリにも、同じような作品があるけど、アメリカ人の潜在的な恐怖が表れているのでしょうかねえ。
△
『アジアの岸辺』
トルコへ単身やってきた文筆業の男。憂鬱な毎日の中で、彼は一人の女につきまとわれる。彼女は人違いをしているようだが?
うーん?解説では、長編以外では、ディッシュの最高傑作といわれていますが、僕にはよくわかんなかった。幻想的な雰囲気は買うんですがねえ。
○
『国旗掲揚』
革に異常性欲を覚えるドウォーキンは、電気療法によってそれを克服する。しかし、その条件付けが、彼を別の方向に導いてしまうのだった。
主人公の二重生活ぶりには、なかなか共感すべき部分はありますが、思想そのものは嫌悪感を催すものでしかないですね。フェティシズムは社会的に悪である場合、矯正されるべきではあるけれど、吐き出し口がないと、人ってやっぱりおかしくなっちゃうからなあ。難しいもんです。
○
『死神と独身女』
自殺を決意したとき、彼女は死神に通ずるコール・ナンバーをダイヤルしていた。
ユーモラスというか、なんというか。変な話。まあ、全体に漂うぐだぐだ感が逆に気持ちいい感じですね。
○
『黒猫』
ミッドナイトと名づけた黒猫と暮らし始めた男。次第に彼はおかしくなりはじめる。
ホラーです。けっこう、フロイト論的なことを好んでこの人は使うようですが。本人がゲイということもあって、やはり、性的抑圧のことには敏感になりやすいんでしょうか。
◎
『犯ルの惑星』
快楽島へ送られることとなったコリー。そこでは、人類存続のため、女性が強姦されるよう決められているのだ……。
うわー、アホだー!原題は『
Planet of the Rapes』。『猿の惑星』のもじりですが、邦題もうまく訳しましたねえ。しかも、これ女性が訳してるんですねえ。とか、考えてしまう僕は古いんでしょうか?とことん、アホな設定なんですが、なかなか風刺もきいていてよろしいんでないでしょうか。
○
『話にならない男』
人と話すには免許状がいる世界。仮免許証を発行してもらったバリーは、再試験に合格するか、推薦を三人にもらえれば本免許を取得できる。彼は推薦状を貰おうと奮起するのだが。
寓話風ですね。コミュニケーションをテーマにした面白い作品。僕もおしゃべりするのが苦手なので、興味深く読みました。ラストシーンが好きですね。
◎
『本を読んだ男』
本を読み、それを批評するだけで生活できる。バグリーはそれを聞き、さっそく「全米出版基金月報」に応募し、合格する。
昔、椎名誠のエッセイで、読書することが仕事になっている会社の話があったけど(小説もたしかあったような)、単純な願望のそれと違って、なかなかひねりがきいている作品でした。「ニュー・ウエイブ・ポストモダン・スプラッターパンク小説」とう節には笑いました。
○
『第一回パフォーマンス芸術祭、於スローターロック戦場跡』
独立戦争時、原住民との戦闘のあった古戦場跡で、芸術祭が行われることになった。昔のアート仲間の推薦で、芸術祭に参加することになったK・Cは、中に吊るされて、芸術祭が始まるのを待っている。
現実と虚構の境界を踏み越えてしまう部分が好きですねえ。ディッシュも批評家が嫌いなのでしょうか。これは『本を読んだ男』の世界とつながった作品ですね。
総評:一風変わった作品が多いです。まあ、それがディッシュの魅力なのでしょうが。「現われない黒幕」というパターンは面白いけれど、やりすぎると逆に「またかよ」という気分になってしまいます。まあ、それでも面白いのは面白いのですけれど。しかし、『犯るの惑星』には驚きました。久しぶりにこんなバカなものを読むことができて幸せです。
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