SMとの混同にもめげずSFを志した〈苦闘の時代〉から、苦心の原稿をバッサリ切られてお礼を言ってしまった〈未曾有の時代〉、「鉄腕アトム」のシナリオに参加した〈映像の時代〉、「破壊された男」に衝撃を受けた〈翻訳の時代〉を経て、縦横無尽の〈創作の時代〉へ。日本SFの揺籃期から興隆期を自ら体験した著者が複眼多岐の視点から綴るインサイド・エッセイ。SFもまた、その個体発生は系統発生を繰り返す!?
前半は面白いのですが、後半に行くに従ってトーンダウンしていくように感じました。というのも、僕が60年代SFに興味があるからなのですが。あとがきには資料にしようとはしていないと書かれてありますが、意図に反して資料として読んでしまったからでしょう。後半は作者が語るようになんだかネタがなくなっての苦し紛れに感じました。それとも、それも含めてギャグにしようと思ったのか。
とにかく、最近、福島正実さんに興味があって読んでいたのですが、人の原稿をバッサリ切り取ったり、そうとうなこともやっています。「覆面座談会」の件はこれまでにも何度か他の作家のエッセイで目にしていたのですが、慇懃無礼に批判しつつも、福島氏の功績は称えているようです。このまわりくどい言い方があまりいい感じがしないのですが。あと、註のギャグをやたらにつけるのもしつこいのであまり洗練されているとは言い難い感じがします。
豊田さんは古代史SFが得意で、僕もいくつか読んでいます。『退魔戦記』は「SFマガジン」で読んだのですが面白かったです。だから、福島正実氏にカットされたというのは残念です。言語ギャグは読んでみたかった。すると、やっぱり筒井康隆氏の「火星のツァラトゥストラ」でのスーダラ節のギャグは切られちゃったのかなあ。
海外作家とのエピソードなんかもあるのですが、「渡航費用を出さんといかん」(といったような話があったように僕は記憶しているのですが)といってゴネたオールディスに対して皮肉をいったり、この人自身もけっこうくせのある人なのだなあと思いました。
あとは手塚治虫のキャラクターのスパイ事件なんかのお話が興味深かったです。今、ウィキペディアで確認したら載ってましたが、W3事件と呼ばれているようですね。昔、岡田斗司夫の『オタク学入門』の「少年漫画国盗り物語」かなんかで言及されていたので、ははあ、こういうふうだったのか、と得心がいきました。でも、犯人はいったい誰なんでしょう。
さて、10月21日に「21世紀を夢見た日々 SF作家黄金の60年代」というテレビ番組がNHK教育テレビで放映されます。もちろん、SFファンの人はご存じでしょうが、お見逃しなく!
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