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SF素人が空想科学小説に耽溺するブログ。

モラトリアム

   

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SF読もうぜ(72) P・J・ファーマー他『時間SFコレクション タイム・トラベラー』

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時間SFをテーマにしたアンソロジー。


ソムトウ・スチャリトクル『しばし天の祝福より遠ざかり』

 異星人の仕業により、地球の人々は同じ時間を繰り返し繰り返し生きなくてはならなくなった。毎朝二時間の自由時間を除いて・・・・・・。

 毎日女に振られるっていうかわいそうな主人公。ですが、反体制的なラストがお気に入り。

ロバート・シルヴァーバーグ『時間層の中の針』

 綿の味が口いっぱいに広がった時、ミカルスンは気づいた。時跡が干渉され、人生に改変が起きたのだ。これは自分と妻との間を引き裂こうとするあいつの仕業に違いない・・・・・・。

 これはJ・T・マッキントッシュの『第十時ラウンド』の逆。未練のある女と結婚するために時間を改変しようとする。しかし、この話は妻を取られるほうの話だ。しかも、『第十時~』と違い、同一線上の時間だけにたちが悪い。

チャールズ・シェフィールド『遥かなる賭け』

 死の直前にある彼女を冷凍睡眠処理させた「わたし」は自らも冷凍睡眠に入り、未来に望みをかけることにした・・・・・・。

 「愛」ですねえ。こういうのも時間ものに含めるのか・・・・・・。しかし、この人、不撓不屈だ。

ブルース・スターリング&ルイス・シャイナー『ミラーグラスのモーツァルト』

 他次元の過去へ、企業の命を帯びてやってきたライス。ラジカセ片手のモーツァルトやマリー・アントワネットと友人や恋人となるのだが・・・・・・。

 サイバー・パンク。やはり、人間が退廃している。他次元の過去だからメチャクチャしてもかまわないって、やっぱりサイバーパンクな論理。

F・M・バズビイ『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』

 自らの人生の中を不連続に跳んでしまうラリイ。気づくと彼はウィネトカで目覚めた。と、するとこの時代は、ジュディとの結婚生活中なのか、それとも?

 自分の人生の中をとびとびに、過去やら未来やらバラバラにいってしまう男。友人や恋人らと築き上げた関係もリセットされてしまう。すごいなあ。純愛・・・・・・ではないな。

フリッツ・ライバー『若くならない男』

 人々は墓場から誕生し、母親の子宮へと帰っていく。その中で一人、若くならない男・・・・・・。

 うーん、不思議な味。こういう異常な状況で達観したしみじみした語り。こういう作品は好きです。

C・J・チェリイ『カッサンドラ』

 「クレイジー・エイミイ」と呼ばれているエイリス。彼女には死に行く人間の姿が見える。やがて、それは現実へ・・・・・・。

 時間ものというよりは、ミュータントか超能力ものかな?破滅ものが大好きなので、これもよかった。こういう才覚を使って逃げ延びる型の話は好きなので、二重に楽しい。

チャールズ・L・ハーネス『時間の罠』

 トロイは州総督暗殺のメンバーに選ばれた。不思議な老人プールの暗躍が陰にはあったようなのだが、その老人の招待はわからない。暗殺に成功したトロイではあったが・・・・・・。

 でかい!スケールでかいねえ。ハッタリ効きまくりでいいです。トロイの能力もすごいと思ったけど、生命子とかの理論づけとか、妙に面白い。

デーモン・ナイト『アイ・シー・ユー』

 スミス氏(仮名)は過去や現在のあらゆる場面を覗ける機械を発明した。

 隠し事のない世界が実現されるまでの経過の描写や、社会に与える影響などがもうめちゃくちゃ面白い。特に妻の不貞を覗いた男を、その義兄が覗いているところがよかった。

デイヴィッド・レイク『逆行する時間』

 中古のフォルクス・ワーゲンにタイム・マシンを搭載したアンブローズは未来へ出かけた。しかし、そこにいる人々は現在が1900年だと主張しているのだ。これは、どうしたことだ?

 羊とか出てくるところがオーストラリアSFです。ユーモアSFだけど、なんだかちょっとホラーなところもある。なかなか面白かった。

R・A・ラファティ『太古の殻にくるまれて』

 大気汚染で破滅に頻している世界。「高山クラブ」の面々は百年後の夜にもう一度会おうと約束を交わす。

 前に短編集で読んだときにも、まったくどこが面白いのか理解ができなかった。(もしかして)と思いつつ、挑戦してみたが、またも玉砕。なにが、面白いのか。

フィリップ・ホセ・ファーマー『わが内なる廃墟の断章』

 1980年、地球の外に現れた天体が地球人の記憶を奪い始めた。最初は四日間。ところが、だんだんとその記憶喪失の期間は増大し始めて・・・・・・。

 面白い。後半は『アルジャーノンに花束を』と同様の感動を覚えました。幼い頃のほうが希望に満ちていて、すれていない心にじーんときます。この短編集の中では一番印象に残った作品です。

イアン・ワトスン『バビロンの記憶』

 現代に建てられたバビロン。完全に再構築されたバビロンでは、人々でさえ、その世界観に完全になりきらねばならない。

 温故知新といった感じなのでしょうか。純文学的な作品です。ただバビロンについてそんなに知らないので、よくわからなかった部分があるのも事実。けれど、まあ、面白いと思いました。

 総評:ストレートなタイムトラベル作品はなく、初心者向けではなく、通向けの作品だと感じました。よくわからなかったのはラファティの一篇だけで、あとはすごく楽しめました。いわゆる「南部」のトールテールものは僕には不向きみたい。
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