稲葉由紀『恐怖の散歩 だまし絵』
恐怖小説雑感と自らの恐怖体験。
○
チャールズ・ディケンズ『信号手』
「わたし」が知り合った鉄道員は人死にが出る時にトンネルに現れる幽霊のことを語りだした・・・・・・。
イギリスの作家、ディケンズの恐怖小説。内容はベタです。しかし、ベタであるからこそ面白い。
○
H・G・ウエルズ『赤い部屋』
「ぼく」は幽霊がでるという屋敷の「赤い部屋」で一晩過ごすことになった。そこで待っていたのは・・・・・・。
恐怖を科学的に解析しようという試みかな?「恐怖」がテーマの文字通り恐怖小説。
○
ロード・ダンセイニ『電離層の幽霊』
ある片田舎の城を買い取り、移り住んだニーチェンズはなにかの気配を始終感じている。彼はロンドンの科学者の友人に幽霊を追い出す手立てはないものかと相談するのだが・・・・・・。
科学者がもってくる装置が面白いです。それと幽霊がラジオの電波のように跳ね返ってくるところが笑えます。これはSFらしい作品です。
◎
レイ・ブラッドベリ『死人使い』
身内にものすごいコンプレックスと被害者意識を抱いているベネディクト氏。葬儀屋の彼は町が寝静まった夜、鬱積を打ち払うためにあることを行っているのだった。
き、気持悪い。生理的嫌悪と人間の邪悪さが相俟って、ぞくぞくする小説。なんだか、暴動的なラストもお気に入り。
○
フランク・グルーバー『十三階の女』
冒険家のジェヴリンは大型デパートボナンザ・ストアに買物に行く。エレベータで十三階に上がった彼は蒸留器を買い、ついでにそこの店員とデートに行く約束を交わす。ところが彼女は現れず、翌日、訪ねるとこのデパートには十三階などないというのだ!
うーん、これもベタな話ですが、面白い。あるはずのない十三階っていうシチュエーションがやはりいい。
○
小笠原豊樹『救援隊』
学校に吸血鬼がでる。そんな噂が広がっていた。今夜八時、ある女の子が襲われるというので、先生の指示で小学生たちの救援隊が結成される。
うーん。話の構成なんかあまりうまくないんですが、雰囲気がいい。この人は子どもがずいぶんお気に入りのテーマのようだ。
△
田中小実昌『悪夢がおわった』
死んだ妻によく似たその女に翻弄されたと知ったとき、かれは文子と結婚しようと決心した。悪夢がおわった。そして・・・・・・。
微妙。
△
都筑道夫『不快指数』
学生時代の友人の小宮山が語り手のもとに訪ねてくる。ある女につきまとわれているというのだが・・・・・・。
全体的にどんな話か認識できなかった。しかも、ありがちな感じだ。
△
コーネル・ウールリッチ『モンテスマの月』
赤ん坊を抱いて女ははるばる来た。赤子の父親を求めて・・・・・・。
うーん?怖いのは怖いのかもしれないが、話がよくわからなかった。
『超心理学、ソ連学会に進出?』
題どおり。なかなか面白いけれど、どうしてやはり、インチキくさい。
△
リチャード・マティスン『大学街の怪』
学生の時分に過ごした町へとやってきたセールスマンの主人公。昔、過ごした町をまわってみる彼だが、どうやら彼を尾行しているらしきやつが・・・・・・。
最初の数ページ読んだだけで、ラストが予想できました。
○
ロバート・ブロック『影にあたえし唇は』
「きみの妹に会った」とジョウはいうのだが、その妹は三週間前、交通事故で無惨な最後をとげていたのだ!
怪談ミステリ。二転、三転する展開がなかなか楽しい。意味深なラストもグー。
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グローリア・ビッグズ『猫ぎらい』
猫に異常に怯えを示す妻のクララにハリイは子猫をプレゼントするのだが・・・・・・。
うーん、なんだか不快になるお話。怖くはないな。
『銀幕のお化け紳士録』
気持悪い写真がいっぱい。その中でも『光る眼』の子ども達の目が一番怖い。
斉藤守弘『現代の謎 人間消滅ミステリ』
なんか昔の学年雑誌の隅のほうに載っている記事みたいな記事。
◎
ウィリアム・ホープ・ホジスン『闇の声』
星のない闇夜の海、薄もやが海面一帯をおおってそよとの風もないなかを、その声は、この世のものならず響いてきたのだった。
うーん、いい。こういう話は大好きだ。菌におかされていく様子がおぞましくていい。関係ないけど、ゲゲゲの鬼太郎の鬼太郎が毛だらけになってしまう話を思い出した。
◎
ジョン・コリア『特別配達』
新聞の身の上相談に奇妙な手紙が寄せられた。その男はどうやら人形に恋をしてしまっているらしい・・・・・・。
江戸川乱歩の『人でなしの恋』を思い出しました。ピグマリオン・コンプレックスなんだけど、こういう性的倒錯の話は好きだなあ。エロ・グロはやっぱり面白い。
総評:「SF」という感じでなく、少し不思議で恐ろしい物語たち。古典みたいな作品がやはり多いです。ただ、やっぱりSF味が足りなくて、欲求不満気味。さっそく、次の号を読んで、SF分を補給せねば!
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