悪戯好きの黒人の双生児、生意気な少女、発育不全の赤ん坊、そして言葉さえ知らぬ白痴の青年。かれらは人々から厄介者として扱われていた。しかし、かれらはコンピューター顔負けの頭脳、テレパシー、テレキネシス、テレポーテーションなどの能力をもつ超人だったのだ!それぞれが無駄に使っていた超能力も五人が結集すれば、人類を破滅にみちびきうるほどの恐ろしき力となるのだ・・・・・・。ミュータント・テーマの傑作長篇。
面白いというよりは、「凄みのある」作品、だと感じました。
虐げられていた子どもたちが、能力を持ち、それぞれが「一人」の手足や頭となっていく。「恐ろしき子どもたち」というのはけっこう好きなテーマなのですが、この話はその中でも、戦慄を感じます。子どもが行う無邪気ながら、それでいて残酷な行為。そのギャップに、僕は薄ら寒さを感じてしまう。
大人のように、明確な判断基準を持っていないため、ある意味で子どもは「空っぽ」の存在なのだなと思います。そこでは、善悪で動いていない空虚な怖さがあり、それが未知、「なんだかわからないもの」の恐怖を我々の心に浮かび上がらせる。ローンの目が人々を困惑させるのも、そのせいなのでしょう。
そして、成長の儀式を通り抜ける第三章・・・・・・。唐突感のあるラスト数ページには驚きます。『幼年期の終り』をなんだか思い起こしましたが、あれとは、やっぱり、ちょっと違うかな。あれは人類を超える物語でしたが、これはまだ地続きでいるのだから・・・・・・?
おそらく、これから何度も読み返すことになるだろう、そんな作品です。
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