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SF素人が空想科学小説に耽溺するブログ。

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SF読もうぜ(140) フレドリック・ブラウン『スポンサーから一言』

74c6f67a.jpeg フレドリック・ブラウンの短編集。

○<b>『土人の魔術』</b>

 ハイチから帰ってきた夫人が、亭主と行った賭けの行方は?

 ショートショート。オチは読めたけど、なかなか楽しい。

△<b>『歩哨』</b>

 血みどろの戦い。惑星間の戦争は泥沼化している。敵は・・・・・・。

 今では、使い古された手です。当時がどうかは知りませんが。

△<b>『最初のタイムマシン』</b>

 タイムマシンを発明した科学者のもとに集まった三人。その中の一人がとった行動とは・・・・・・。

 これも普通な感じです。オチが普通だとショートショートは辛い。

○<b>『あたりまえ』</b>

 幾何が苦手なヘンリーは悪魔を呼び出し、テストの点をよくしようと目論むが・・・・・・。

 ちょっと笑った。悪魔を呼び出す方法などに通じていれば、もっと笑えたかも。

○<b>『実験』</b>

 タイムマシン第一号を発明した博士が行った実験の結果とは?

 うーん、こういうみもフタもない話は好きなんで。

○<b>『血』</b>

 タイムマシンに乗って未来に逃げ出した二人の吸血鬼が見たものとは?

 ニヤリとしてしまう話。設定の作り方の着想がいい。

○<b>『至福千年期』</b>

 サタンは「最後の願い」において、最も非利己的な願いが出されるのを恐れていた。

 こういう絶望的な状況を知恵で打開していく物語はいいですね。

○<b>『効きすぎ』</b>

 狼男ならぬ牡鹿男のウィルキンソンは、折の中の雌鹿とねんごろになろうとするが・・・・・・。

 ショートショートながら、幾つか展開が広がっていっていいです。

○<b>『立ち入るな』</b>

 ダプタインという子孫を環境に適応することのできるものが発明された。最初の火星人はダプタインのおかげで、そうなることができたのだが・・・・・・。

 うん、なかなか面白い。オチは読めるのだけれども、ダプタインという薬の効用が面白かったので。

◎<b>『武器』</b>

 重要な開発研究をしているグレアム博士のもとへ、一人の客が訪れる。

 アイデア・ストーリーだけでなく、ある種のメッセージ性のある作品。こういう説教調の作品は好きですね。最後のオチも読めなくて、衝撃感が軽くありました。

○<b>『選ばれた男』</b>

 アルコール中毒のハンリーは誰彼なく酒をせびる男であった。そんな彼が地球を救おうとは誰しも予想しえなかった。

 こういう「酔っ払いが世界を救う」という話はけっこうありますが、好きなんですよねえ。ただ、現実に宇宙人が来るのだとしたら、標本をとっているんだから、無作為でも、複数のサンプルを選ぶでしょうね。

○<b>『ドーム』</b>

 最終戦争の到来を予測して、ブラデンは彼の開発したドームの中に閉じこもった。彼がそれを取り除いたとき・・・・・・。

 辛い・・・・・・。さびしすぎるなあ、これは。

○<b>『鏡の間』</b>

 突如として「鏡の間」に通じる部屋にいた主人公。なぜ、彼はこんなところに?

 ある種の使命を帯びて行動する主人公の姿がよい。

◎<b>『地獄の蜜月旅行』</b>

 1962年のある日、男児の出産がまったくなくなった。大型コンピュータの管理を行っていた元宇宙飛行士のカーモディーは、コンピュータに選抜され、男児の生まれない原因である放射線のとどかない月で、ソ連の女性との子作りを任命される。

 なんか、僕のあらすじでは、下品そうな作品に見えますが、そうではありません。幾つかの奇想的なアイデアを組み合わせて、一つの物語にしているその手腕に脱帽。こういうユーモアのある短篇は、ブラウンの真骨頂なのでしょう。

○<b>『最後の火星人』</b>

 新聞社に、手前の建物にあるバーから、電話がかかってくる。どうやら、自分が最後の火星人だと名乗る男がいるらしいのだが・・・・・・。

 なかなか面白かった。ただ、精神病の部分はショートショートの常套手段なので、衝撃ではないですね。

○<b>『鼠』</b>

 セントラル・パークに宇宙船が停船した。生物学者のビル・ホイーラーは自分のアパートからそれを見下ろしていたが、調査を命じられ、宇宙船の内部に入る。

 まあ、ありがちな話です。

◎<b>『闘技場』</b>

 アウトサイダーと戦争を行っている人類。その中の一人、偵察艇パイロットのカーソンは、気がつくと自分がドームにおおわれた青い砂の地に倒れていることを知る。

 なかなか面白かった。超生命体に、種の代表として、闘技場に放り込まれた二人が繰り広げる死闘。最後の主人公の手段なんかが、アイデアストーリーとして素晴らしいですね。

○<b>『かくて神々は笑いき』</b>

 「わたし」は前の旅で経験したできごとを、同僚の宇宙飛行士に語りだす。その惑星では、イアリングが彼らをつけていたのだ。

 なかなかよかった。身につけているものにのっとられる。これは怖いことだなあ。

☆<b>『スポンサーから一言』</b>

 ラジオの視聴率の最も高い時間帯、朝8時半ちょうどに、その放送は行われた。「スポンサーから一言。戦え」。これはいったい誰から、どのような目的で放送されたのか?

 素晴らしいです。世界中、一緒の時間とかじゃなく、朝八時半、時差につれてという設定にまずやられます。それから、それがおそらく平和目的であるのにもかかわらず、「戦うな」じゃなくて、「戦え」であるのが、すごいんですよねえ。「スポンサー」という自称も謎を含んでいて、最後まで一気に読み終えました。いい作品です。

△<b>『翼のざわめき』</b>

 グランプはポーカー好きだった。ある晩、彼はいつものように尋ねてきた客とポーカーをするのだが・・・・・・。

 うーん、よくわからなかった。ギャンブルもしないしなあ。

 総評:アイデアストーリーが楽しめる作品。アイデアのみで、特に文章に情感がないので、最初は辛いなあと思っていたのですが、ショートショート作品のところを過ぎると、そうでもなく楽しめました。でも、決め付けかもしれませんが、やっぱりブラウンの本領は軽妙なユーモア短篇にあると感じました。
 ベストは『スポンサーから一言』。原書では、『地獄の蜜月旅行』が表題作のようですが、日本の編集側もやっぱりこの作品がいいと思って、表題にしたんですかねえ。素晴らしいの一言です。

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