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シオドア・R・コグスウェル『壁の中』
ポージーは世界を取り囲む「壁」の外へ見たいと思っていた。しかし、魔法などの精神性を重視するこの世界で、ポージーのような人物は危険視されていた。かれは父親の作ったという「機械」の論文をかいまみて、それを製作しようと決意するのだが・・・・・・。
空を飛ぶ話が好きなんですよねえ。だから、このお話も大好きです。壁に囲まれた世界っていうのもそそるシチュエーションです。人物造形なんかは、少年漫画そのものですが、かえってそのベタベタ感が心地よく感じました。ただ、種明かしにはちょっとがっかりかも。
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ドナルド・A・ウォルハイム『暴風雨警報』
気象観測所に勤める主人公は、ある日、落下した隕石を捜しに荒野へ出かける。すると、なぜかその地点に、台風やらなにやらが集まってきて・・・・・・。
途中の生物たちの描写がよかった。不定形生物が好きなもので。
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エドモンド・ハミルトン『反対進化』
ある飛行士の言葉を信じて、生物学者二人とその飛行士は、カヌーで北ケベックの河を遡っていた。飛行士は上流でゼリー状の生物を目撃したというのだが・・・・・・。
うーん、こういったすべてを覆してしまう話もいいなあ。反対進化という言葉の響きもいい。最初の思い上がりが徐々に破壊されていくのが、楽しいです。
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マレイ・レンスター『死都』
原始人の遺跡で発見した一本のナイフのために、マーシャルは科学者としての地位を失った。そのナイフはステンレス・スチール製だったのである。そこには、いかなるものが住んでいたのか?
オーパーツの物語。いろいろ気になる部分はあるのですが。そんなに高度に発達した文明が、たかだかナイフを何本も落としていくのか、とか、そんなに頭が悪いのか?とか。でも、まあ、面白いです。
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フレドリック・ブラウン『手品』
ダブルデイトの後、エルジーのスタジオで四人は過ごすことになった。そこで、手品が始まったが・・・・・・。
うーん、なんともいえない作品ですね。ただ、オチの付け具合がよかったかな?
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ウィルスン・タッカー『ここは地球だ』
いらいらしていたチャールズ・ホーンは、突然、目の前に現れた人物に、「ここは地球ですか?」と尋ねられる。
?いまいち、よくわからないお話だった。
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ロッド・サーリング『真夜中の太陽』
地球は公転軌道を外れ、太陽に近づいてきた。終末の時が近づく中、ノーマ・スミスはブロンソン夫人と、アパートに二人きりで残る。
途中まではよかったが、余計なオチをつけたがために・・・・・・と感じました。素直に終末ものでよかったのでは?
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リチャード・マシスン『奇妙な子供』
ロバート・グレハムは自分が車をどこに止めたのかを忘れてしまった。それだけではなく、自分がどこへ住んでいるかも、電車の乗り方さえ・・・・・・。
いまいち、意味がよくとれなかった。面白いんでしょうか???
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ウイル・F・ジェンキンズ『くりのべられた審判』
昆虫学者である主人公は、珍種の蝶をさがすため、南米の地へ旅たつ。そこで、彼はホセ・リビエラと出会う。彼は何かに怯えているようだ。
根絶してしまうのではなくて、最後、ちょっと事件をにおわせた方が面白かったのではないかなあ、と思った。しかし、アリって怖いのお。
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ゼナ・ヘンダースン『静かに!』
知人の息子の病気の面倒を見ていたジューン。幾何の宿題をしていた彼女は彼に静かにするように注意していた。そこで彼は「消音機」を作り上げてしまった。
ゼナ・ヘンダースンということで「いい話」を期待したんですが・・・・・・。こえーよ!ホラーです。
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ジョー・L・ヘンズレイ『最後の地球人』
規則にうるさいアラコシア人。彼らは地球との戦争に打ち勝ち、地球人類の標本を艦内に飼育していた。ところが、地球人の見張りに立ったものは次々と精神に変調をきたしていく。
うーん。あらすじを書いていて面白そうなお話なんですが。オチがいまいち弱いような気が・・・・・・。
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R・シアーズ『災厄』
疫病神と呼ばれている主人公の行く先々では、偶然か、災厄ばかりが起きる。取材先のアルジェリアで、彼は、昔、彼が火事から救った女の子と出会い、熱烈な恋に落ちたのだが・・・・・・。
こういう能力は、まったくもって、ごめんこうむりたいなあ。行く先々で、ひどい事件が起こる。ダーティ・ペアみたい。
総評:突出した作品がなかった、というのが読み終わっての一番の感想です。「ちょっと不思議」程度で、「異常」というべき世界観ではなかったのが、やっぱり印象が弱い原因でしょうか。しかし、『壁の中』は宮崎駿作品を見るような感覚で読めた楽しいファンタジイでした。
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