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SF素人が空想科学小説に耽溺するブログ。

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SF読もうぜ(36) ロバート・シェクリー『残酷な方程式』

ロバート・シェクリーの短編集。


『倍のお返し』

 悪魔が現れて三つの願いをかなえてやるという。ただし、なにを願ったとしても、自分の最大の敵にそれが倍になってもたらされるというのだ・・・・・・。

 地獄が天国の下請け会社であるとか、よくある型の物語かもしれないが、それに一つ条件をつけて、最後、うまくまとめた感じ。

『コードルが玉ネギに、玉ネギがニンジンに』

 麻薬のトリップ中に啓示を得たコードル。他人に悪意を撒き散らすニンジンでいるか、おとなしく玉ネギでいるか・・・・・・。彼は前者を選ぶ。

 めちゃめちゃ面白いんですけどね。ラストが納得いかない気が・・・・・・。非SFですが楽しい作品多いです。

『石化世界』

 ラニガンは長年悪夢に悩み続けている。それどころではなく、彼は「現実世界」においても常に幻覚を眼にしているのだった。

 精神科医との問答とか、現実への懐疑とか、僕好みのお話でした。シェクリイにはかなりシンパシーを感じてしまいます。

×『試合:最初の設計図』

 試合場に立った時、彼は自分が今日、勝てないことを確信した・・・・・・。

 うーん?なにが面白いのだろう?

『ドクター・ゾンビーと小さな毛むくじゃらの友人たち』

 警官のガルシアは、どうしたことか、わたしをドイツから逃げ出した戦犯だと疑っているらしい。もちろん、わたしはそんな人間ではない。しかし、人類に対してこれから行うことはそれ以上の犯罪になるかもしれないのだ・・・・・・。

 人間を間引くという発想は『寄生獣』なんかと一緒ですね。大局的に見れば、この考えは正しいのかもしれない、と時として思ってしまうよね。それより、語り口や、主人公のキャラクタがなんともいえずいい作品です。

『残酷な方程式』

 融通のきかないロボットに快適な探検基地から締め出されたハロラン。このままでは脱水症状で死んでしまう。そこで彼がとった行動とは?

 シェクリイのアイデア・ストーリー。やっぱり、最後がかっちり決まるとかっこいいぜ!ロボットとの会話も楽しいなあ。

『こうすると感じるかい?』

 ある日、サンディーのもとに送られてきた大きな包み。その中に入っていたのは電化製品。その電化製品は、サンディーをマッサージ、いや、愛撫しだすのだが・・・・・・。

 エロティックな短篇。しかし、最後には笑ってしまう。

『それはかゆみから始まった』

 ある夜、わたしは別世界の人間に助けを求められることとなる。

 極小宇宙?まあまあ、楽しい。

『記憶売り』

 平和や秩序を乱すものはすべて排除されてしまう未来世界。「記憶売り」のエドガーが「ぼく」の村へやってきた。

 文学は社会にとって悪である。うんうん。

『トリップ・アウト』

 人間に変装したパパジアンは、観光のため、地球をぶらつくことになる。なんの予備知識もなしに・・・・・・。

 これも語り口が面白い作品。SF短篇という感じではないですが、こういう話があってもいい。一つレベルが上の作品というよりも、異相な作品といったほうがいいでしょうか。

『架空の相違の識別にかんする覚え書』

 ハンスとピエールは脱獄を試みている。彼らはフランス人とドイツ人か、脱獄の過程でどちらかわからなくなってしまい・・・・・・。

 これも認識に対する懐疑的な視線があって、面白いです。ゲシュタルト崩壊を起こしそうな人にオススメ?

『消化管を下ってマントラ、タントラ、斑入り爆弾の宇宙へ』

 幻覚剤を使って、グレゴリーとブレイクはトリップしようとしていた。

 ショートショート。最後がちょっと面白いかな。

『シェフとウェイターと客のパ・ド・トロワ』

 なぜ、その客は太り続け、シェフやウェイターは逃げ出したのか・・・・・・。それぞれの視点から描く。

 非SFですが、これも小説の技法としての面白さが目立ちます。芥川の『藪の中』みたいなもんでしょうか。それぞれが認識している現実は主観的なものにすぎないというテーマがここでもはっきり打ち出されています。

『ラングラナクの諸相』

 異星の都市、ラングラナクでの普通の生活。

 小説の裏を書いたような小説。事件がなにも起こらないという小説的事件という逆説。淡々とした叙述、読書や食事や仕事や・・・・・・それらが普通に描かれている。SF私小説といった感じの作品。

『疫病巡回路』

 時空を超えてやってきたセールスマンはニューヨークで疫病に劇的に効く薬を販売しようとするのだが・・・・・・。

 ここでも人類を間引くという想念がでてきます。どこかで読んだような既視感がするんだよなあ。

『災難へのテールパイプ』

 たたき上げの艦長ドラクストンは、将軍の息子が副操縦士として着任するのにご立腹だ。彼は過酷な試練を副操縦士に与えるのだが・・・・・・。

 うーん?ちょっと強引な展開が目立っているような気がする。

 総評:非SF作品も含めて、小説としての技術の進歩が目立つ作品集。アイデア・ストーリーともう一方の作品群は並べて考えないほうがいいかもね。それはまったく異相の面白さだと思いますので。題名も面白いものが多いっす。
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