ロンドンにまき起る奇怪な事件を追って神出鬼没する名探偵シャーロック・ホームズは、その怜悧な推理と魅力的な個性で読者を魅了する。近代探偵小説を確立したホームズ物語の第一短篇集。赤毛の男が加入した奇妙な組合のからくりを追う『赤髪組合』、乞食を三日やったらやめられない話『唇の捩れた男』など10編。意表をつく事件の展開、軽妙なユーモアがあふれる作品集である。
○
『ボヘミアの醜聞』
ホームズが「あの女(ひと)」というとき、それはある女性個人を示す。ボヘミア王の醜聞事件の解決を依頼されたホームズとワトソンはある手紙を手に入れることを狙う。
でました「あの女」。アイリーン・アドラーはたしかに魅力的な女性だと思います。
☆
『赤髪組合』
ある日、新聞広告で目にした求人に質屋の主人ウィルスンは引きつけられた。赤い髪の毛の人を優遇する組合に一人の欠員がでたというのだが。
うーん、結末を知っているのになんという面白さ。
○
『花婿失踪事件』
ある日、ベーカー街221Bに訪れた女性は婚約者が失踪したことを語る。
ワトスン君は女性の評価にうるさい人だという事がよくわかります。でも、この人可哀想だなあ。この作品は乱歩に影響を与えているような気がします。
○
『ボスコム谷の惨劇』
父親を殺したかどで息子が逮捕された。ホームズはレストレードから事件の応援を頼まれるのだが・・・・・・。
一つのパターンとして昔やった悪事の復讐として――というパターンが出来上がっていますよね。そういう意味ではマンネリ感があるような。でも、その悪事を語る場面が国際性やスリルもあっていいんですよねー。
◎
『オレンジの種五つ』
その封書からはオレンジの種が五つでてきた。それを見て青ざめた父親に降りかかった災難を見て、息子はシャーロック・ホームズに解決を求めたが・・・・・・。
K・K・Kのことを僕はこの小説で初めて知りました。秘密組織とか秘密宗教とかそういうものへのロマンチシズムといいましょうか、恐怖感というのは非常に大好きです。今でいうと完全に悪の組織です。それがエスカレートしていくとモリアーティ教授になるのですかね。
☆
『唇の捩れた男』
友人をさがしにアヘン窟を訪れたワトスン。しかし、彼はそこで意外な人物に声をかけられる。
子どもの頃、『アヘン窟の男』という題で読んだことがありますが、ものすごくおおはずれな題のような気がします。この職業って、実際はそんなに儲からないと思うのですが、どうでしょう。でも、そういう発想の仕方が非常に面白い作品だと思います。
◎
『青いガーネット』
ホームズのもとを尋ねたワトスン。一つの帽子をタネにして推理を働かせることになったが、それが意外な方向に飛び火して・・・・・・。
青い紅玉という不思議な題名なのですが、宝石の背負う運命というのはさんざん少年探偵団できかされました。ささいな謎の解決を積み上げていくことで解決へのプロセスとなっていくのが次に次に読ませるテクニックでうまいと思うし、非常に快感です。
○
『まだらの紐』
恐怖におびえて依頼にきた婦人は殺された姉の最後の一言を探偵に報告した。「まだらの紐が・・・・・・」
ワトスン君が煽るわりにはそこまで怪奇な感じはしませんが、なかなか楽しい。ドイルの物語には娘を虐げる継父というのがよく登場しますが、なぜなのでしょう。
○
『花嫁失踪事件』
結婚式の最中に花嫁が失踪した。貴族の依頼人はシャーロック・ホームズに依頼したがそこに待っていた真相は・・・?
うーん、なんかかわいそうな気もしますが。この頃は、世界的に動乱の時代だったようなので、こういうこともきっとあったのだろうなあと思わせる感じです。ロマンがあるなあ。
◎
『椈屋敷』
家庭教師のいい口を見つけた女は不思議な条件のついているのを不安に思い、シャーロック・ホームズに相談を持ちかけた。
魅力的な謎を設定できれば、作者の勝ちだと思わせる作品。活躍する女性のキャラクターもいい感じです。
総評:面白い。謎解きミステリではないんですね。どちらかというと冒険のほうが中心におかれているような気がします。ミステリの厳正なルールという別にいらんものがなくて自由だったからこそ、このようなものも書けたのでしょう。データは読者に完全に提示されないのですが、探偵が物語を解いてゆくその謎の解明自体が楽しいわけですからね。僕のような受動的な読者には快いし、パズル的なミステリを好む人には物足りないかもしれません。でも、とにかく楽しいです。
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COMMENT
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世界一の名探偵
ワトスン君の称揚の割にホームズは失敗が多いと思うのですが、「オレンジの種五つ」も「しまった!」とか「やられたよ」とか「遅かったようだよ、ワトスン君」的なお話で僕としては自信満々なホームズがやられたときの強がりや悔しがりように少し笑ってしまうのですが・・・・・・。
子どもの頃に読んで印象に残っているのは「吸血鬼」「這う人」「ソア橋」など、僕は「事件簿」の作品に一番はまっていたようです。