深夜、銀幕のような濃霧のたちこめた西部イングランドの荒野に、忽然と姿を現した怪物。らんらんと光る双眼、火を吐く口、全身を青い炎で燃やす伝説にまつわる魔の犬は、名家バスカヴィル家の当主ヘンリ卿を目がけて、矢のように走る――。きわだった叙景によって舞台となる特殊地帯を一種の密室のように仕上げ、息づまるばかりの緊張を生む、ホームズ物語中最大の長編。
でかい犬が好きです。神話に出てくる犬、ケルベロスなどかっこいいイメージがあって、そこにはあまり奇怪なイメージというのはないです。そういう意味で僕的には伝奇的なおどろおどろしいイメージとは違う読みになってしまったかもしれません。
エラリー・クイーンが世界探偵小説のベストテンに選出した作品ということですが、そこまではないんじゃないか?と思ってしまいました。まあ、昔読んだことがあるので内容を知っているという弊害があったのもたしかなのですが。公民館の図書室でこの本を読んだのを昨日のように思い出します。あのときはもっと怖い!と読んだ記憶があるので、子どもの頃の無邪気な感受性と比べてひねくれてしまった現在の我が身を嘆くばかりです。
でも、ホームズが沼沢地をうろうろしているところとか、変人ぶりが発揮されていて楽しいですし、ワトスン君のスリルある日常も楽しいです。しかし、僕はやはりベーカー街にてパイプをすぱすぱ、コカインをチューと打っているホームズの姿がイメージの中に焼きついてしまっているので、その方面での、都市での活躍が見たかったなあと思いました。要するにあまり好みの趣向ではなかったということですね。こういう伝奇的なのは日本の作家のものの方が性にあうようです。横溝正史の作品とかですね。
それにしても、最後の「魔犬」との対決も見ごたえがありました。僕の記憶では谷を渡る風が犬の鳴き声に聞えるのだ!という思い込みがあったのですが、そんな描写はまったくなかったので逆に驚きました。なにを勘違いしていたのだろう?
子どもの頃夢中になった物語を読み直すということを最近行っているわけですが、思い出と共に新しい発見もあって楽しいものです。皆さんもいかがでしょうか。
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