「情報産業論」などの画期的論文を含んだ梅棹忠夫の「情報」に関する論文集。
はたしてテレビや新聞は何を売っているのか?実業に対する「虚業」、その性質に答えを出した非常に面白い本です。
かつて、大阪には「放送朝日」という大阪朝日放送のPR誌がありました。しかし、それはただのPR誌ではなく当時の知識人たちを集めた非常にクオリティの高い情報誌だったそうです。その人たちは、大阪での万博のブレーンとなり、日本の方向性までをも左右したのです。そして、梅棹忠夫というこの本の著者もその一人だということです。
「情報産業論」は非常に面白く読めました。メディアは情報を発して売っている。この事実は今では当たり前のことですが、もちろん言い出した人がいるわけで、梅棹忠夫さんはその「情報産業」という言葉を生み出したのです。
そして、鋭い予言を梅棹さんはいくつも本書の中で言い当てています。「工業の世界で「女工哀史」のようなことが起きたように、情報化社会でもそれは起きる」。社会は変化しても、新たな害悪は起こる、というわけで、現にいろいろな弊害が出ています。「家庭にコンピュータが配置される」ということも予言されています。梅棹さんはもともと文明などを扱ってらっしゃる人で、これはアシモフの心理歴史学につながるような気もします。
昔から疑問に思っていたのですが、「なぜ映画雑誌は新作情報が中心なのだろう」というのが自分の内にあって、その答えが書かれてあって嬉しかったです。それは流通側の論理なんですね。受け手の側よりも発信側の論理があるわけです。そこで、自分が今しているブログなるものを考えると、「観たものを語る」という受け手側の論理があるわけで、そこで受け手が今度は発信側にまわるわけです。これまでは「作品」を発信する側とそれを視聴する受け手の側に二分されていたのが、発信することが容易になったために、双方向発信のようなことができるようになったのです。そういう意味で、ブログというのは観た物を語り合うことのできるいい機能だと思います。なので、皆さん記事を見たらぜひコメント下さい。いつでもウェルカムです。お願いします。
と、いう風にいろいろと勉強になる本で、そして論理の進め方や発想にはSFの「センス・オブ・ワンダー」と呼ばれるやつも感じられて、非常に楽しい本でした。
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