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これを読むとテニプリがいかにギャグ漫画に近いかがわかる(かもしれない) 島本和彦『燃えるV』

f48e4906.jpg テニスのギャグマンガときいてあなたはどの漫画を思い浮かべますか?『テニスの王子様』と答える前にぜひこの漫画を挙げていただきたい。島本和彦の傑作『燃えるV』です。

 幼い頃に父母と別れ、源さんのもとに預けられた狭間武偉(ぶい)だったが、源さんのために立派なお墓を立てたため、家賃が払えなくなり、追い出されることになる。路頭に迷った武偉は両親を捜す旅にでる。あらゆる格闘技をマスターしたVは襲われていた女子のテニスプレーヤーを救い、テニスを始めることとなる。

 彼の武器は常識を覆すテニス(ルール無視ともいえる)。「ルールを知らない」ことを武器に相手をラケットで殴ったり、カウンター攻撃でボディを集中的に狙ったりと打撃によって相手を打ち伏すテニスが持ち味。
 インターハイでは外国人留学生たちが大勢日本に流入。インターハイなのに日本チーム対外国チームというとんでもない展開に、侍魂をむき出しにした武偉が燃える。しかし、チームの構成員の負傷によって武偉はただ一人で団体戦を戦うはめに(この時点で棄権になると思うんですが)。しかし、一回戦で戦ったアメリカチームのボクサーテニスプレイヤーが対戦チームを一人だけ残しボコボコにしてくれたために、武偉は一対一で戦いを挑むことができた(団体戦なのに・・・)。
 はたして彼は外国勢を打ち破って日本一になることができるのか?そして両親と再会を果たすことができるのか?
 「男(漢)とは?」という島本作品において大きなテーマをかなり掘り下げた素晴らしい作品です。

 後年、『吼えろペン』において島本和彦は炎尾燃が昔連載していた『ウィンブル首領(ドン)』という漫画に自分でこう突っ込みを入れていました。

 かなりうがった目であのマンガを読むと・・・・・・ テニスをバカにしているようにも取られかねん・・・・・・

 そのマンガの描写には狭間武偉の必殺技である迎撃ビクトリーが使われていました。「俺はそのときボクシングマンガを描きたかったのだよ、実は!」と炎尾燃は暴露していました。「じゃあ描けばいいのに」というアシスタントの声に炎尾燃はこう答えます。

「ふ・・・そう簡単にはいかんのさ・・・・・・ 大人の プロの世界はな!! 同じ時期に同じ雑誌でほかのマンガ家がボクシングマンガを連載していたとしたら?
 (アシ一同)そういうこともあるのか!!

 島本先生が『燃えるV』を連載していたとき『週刊少年サンデー』では石渡治の『B・B』というボクシング漫画が連載されていました。実際のところどうだったのかはわかりませんが、その後、テニスマンガなのに打撃勝負な描写をボクシング漫画に置き換えて解説しているところを見ると(なるほど!)と膝を打ちたくなるほどの説得力です。もはやテニスマンガではないこのマンガですが、ギャグマンガとしては間違いなく超一流だと思いますので、読んだことのない方はぜひ一度手にとってみてください。
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