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SF読もうぜ(138) バリントン・J・ベイリー『永劫回帰』

img068.jpg 無頼の宇宙船乗りヨアヒム・ボアズは、哲学者コロネーダーたちの手で身体改造された一種の超人だった。彼と機能的にリンクされた「船」とともに宇宙を渡るボアズの目的はただひとつ・・・・・・この宇宙は、定められた輪をたどるように幾度も同じ時を繰り返してきた。その円環構造に楔を打ち込むこと!横溢するアイデアで読者を自在に翻弄する、鬼才のワイドスクリーン・バロック!

 面白かった!

 途中で繰り返す円環構造宇宙の説明に「うーん」とうなりつつさぐりさぐり読んでいたのですが、途中から夢中で読み始めました。最初の宇宙船に生命を維持されている船長、珪素骨の体とかの設定にもビビっときましたが、放浪惑星の正体や、タイム・ジュエルなど、いろんなガジェットが詰め込まれていて面白い。

 ワイド・スクリーン・バロックと呼ばれるジャンルだそうで、『虎よ、虎よ!』と確かに似たところがありますねえ。でも、僕にはこちらのほうが、面白く感じました。性的なにおいを発散させる各惑星の様子だとか、放浪惑星の巨大な宇宙船だとか、奇妙な犯罪者たちなど、これだけケレン味をきかせてくれると、もう最後の方のヨアヒム・ボアズのように楽しむだけです。

 ラストにやられましたね。哲人ボアズが、俗人に戻り、快楽を求めるようになってしまう。しかし、そこで逆にコロネーダーが正しかったことを知るという皮肉。そして、宇宙の構造に対する反逆!
 うねりを持って襲ってくる結末に、震えました。

 ただ、意味ありげに登場したロムレイが途中で物語から姿を消してしまったり、タイム・ジュエルがそんなに活躍をしなかったり、ケレン味が強すぎただけに、残念な部分もちょっと感じました。

 この人には『カエアンの聖衣』という傑作があるらしいですねえ。もっともっと、ベイリーの作品が読んでみたいと思いました。
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