作品数が多いので、大好きな作品だけ挙げます。
『二元論の家』
フロイトの二元論を使ったファンタジイ。特に後半部分の攻撃的衝動の部分が面白いと思います。
『底流』
エリートという読心能力のある青年が、業務引継の際、地位を奪われる前任者に心理攻撃を受ける凄まじい作品。特に文字が大きくされ、強調されるクライマックスシーンがひどい。
『やぶれかぶれのオロ氏』
コミュニケーションの不毛を描いた喜劇。政治的な言い回しはロボットには通じない。特に後半にかけては爆笑。
『睡魔のいる夏』
破滅ものではないのですが、新兵器使用のため死んでゆく人びとの様子を描いた作品。実にいい人ばかりが登場する作品で、ユートピアものとして『美藝公』と同傾向のものだと思います。静かで、お気に入りの作品。
『座敷ぼっこ』
大学生のとき、ゼミの担当教授が好きだといっていた作品。クラスの人数が一人だけ増えているのだけれど、それが誰かわからない。先生は卒業シーズンになると、こういった気持ちをいつも味わうそうです。確かにしみじみとしてしまう良篇。
『群猫』
閉じ込められた下水道で独自の進化を遂げた猫と鰐の闘争。中学生の時はこの作品が一番わかりやすくて好きでした。イメージもすごく頭の中にわいてきます。
『トーチカ』
実験的といってもいいでしょう。ふられたルビを全部読むのはめんどうくさいところもありますが、なぜそのルビなのかを考えると、いちいち笑えます。そして、ラストには大爆笑!
『東海道戦争』
日本SF史にその名を残す名篇。福島さんはこの作品を契機に筒井康隆を核として、SFM増刊号では「架空事件特集」を組んだりして、SF界に影響を与えました。何度読んでも、その狂騒的な雰囲気に頭がクラクラします。
『幻想の未来』
ティプトリーの『愛はさだめ、さだめは死』のようなお話があり、筒井さんは向こうのSFを二十年くらい先取りしていたと誰か(伊藤典夫氏だったでしょうか)評していましたが、まさにその通り。話の読み解き方としては、もとの題名の『無機世界へ』のほうがわかりやすかったかなあと思います。けれど、豊穣なイメージの喚起力があり、特にラストシーンがお気に入りです。
総評:全部で53篇。まあ、ショートショートもありますし。ベストは『東海道戦争』です。同人誌『NULL』に発表されたものが多いですが、発表媒体が、文芸誌・小説誌ではないところがやはり目につきます。特徴としては、やはり精神分析の用語が多いことですね。フロイトをきちんと読んでみようと思いました。
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