31世紀初頭、海王星の軌道付近で奇妙な漂流物が発見された。それこそは、宇宙船ディスカバリー号の船長代理フランク・プールだった。はるか1000年前、宇宙船のコンピュータ、HAL9000によってディスカバリー号から放りだされたプールは、冷凍状態で星の世界へ向かっていたのだ。地球の軌道都市スター・シティで蘇生させられたプールがたどる究極にして最後の宇宙の旅とは・・・・・『2001年宇宙の旅』に始まるシリーズ完結篇。
いやー、よかった。
これは一つのユートピアもの、そして、タイムスリップものとしても読めますね。千年後の地球がどうなっているのか。科学によって駆け抜けた20世紀。その歴史を見れば、未来の世界もおそらくとんでもなく違ったものになっているはずです。しかし、人間の価値観はやはり「愛と死」にあり、世相は変ろうともその二つは不変であるというクラークという作家の信念が見えるようです。こういう楽観性というか、ポジティブなところが僕は好きです。
1997年に出版されたそうですが、科学の成果を取り入れつつ、ヴァーチャル世界を描いたりしています。ここら辺は普通にも思えてしまうのですが、地球から伸びるとてつもなく高い塔、そしてそれをつなぐリングなどは、驚嘆の世界でした。これは他の作品でも描かれているようなので、読んでみたいです。ダイヤモンドが建材であるところなど、前作のつながりが見えるのも好感がもてます。
前作では「スター・ウォーズ」に関するジョークなどがネタとして使われていたのですが、今度は歴史上の偉大な科学者の中にスーザン・キャルヴィン博士の名前が!こういうのはSF読みとして発見できると嬉しいですねー。
解決の仕方が『インデペンテンスデイ』に似ているということはご自分でもお認めになってらっしゃいますが、偶然とのこと。まあ、確かにウイルスというのはけっこう誰でも考え付けそうな・・・・・・。しかし、モノリスに敵意があったとは・・・・・・!ええっ、いきなりそんな展開かよぉと思ったら、さすがクラーク、そんな小さな物語に終ることなく、最後にまたまた世界を膨らませてくれました。しかし、このラストもますます謎めいているような気がしないでもないです。「ファイナル」と名づけているから、もう続編は出ないのでしょうが、いぜんモノリスを仕掛けた人びとの姿が気になってしまって、少しもやもやしてしまうのでした。
最初の展開から、最後まで興奮して、一気に読み終えてしまいました。登場人物らと共に、長い旅を終えたような快い疲労感が頭の中を漂っています。「宇宙のランデブー」シリーズにも、早急に取り組みたいと思います。
アーサー・C・クラーク作品感想
『幼年期の終り』 『イルカの島』 『海底牧場』
『宇宙のランデブー』
『2001年宇宙の旅』
『2010年宇宙の旅』
『2061年宇宙の旅』
『3001年終局への旅』
『神の鉄槌』
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