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SF素人が空想科学小説に耽溺するブログ。

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SF読もうぜ(230) ポール・アンダースン『タウ・ゼロ』

 50人の男女を乗せ、32光年彼方のおとめ座ベータ星第三惑星をめざして飛び立った恒星船。だが不測の事態が発生する。生まれたばかりの小星雲と衝突し、その衝撃でバサード・エンジンの減速システムが破壊されたのだ!亜光速の船を止めることもできず、彼らはもはや大宇宙を果てしなく飛び続けるしかないのだろうか・・・・・・?現代SF史上に一時代を画したハードSFの金字塔登場!

 面白い!

 宇宙の終わりと、始まりを目にしてしまう壮大なドラマ!心にガツンときました!

 ブレーキの利かなくなった宇宙船が、飛び続ける。その中でも、諦めずに保安係として容赦なく現実主義に徹するレイモントのようすにしびれました。常にポジティブな姿勢で物事に対しようとするレイモントの苦闘が心にしみます。船内時間はどんどんとずれ続け、ついには人類が滅亡する時間をも飛び越え、さらには宇宙の終焉を耐え抜くことに・・・・・・。これこそSFの醍醐味です。

 そして、これは宇宙の「あいのり」です。乗り降りも、リタイアもできませんが・・・・・・。船内での恋愛模様が年代を追って語られ、最終的には元の鞘に収まります。船内ではお互いに割り切った感情を持った男女の交際などもあって、あまり僕の好きな世界観ではないはずなのですが、けっこう楽しかったです。けれど、今までも感じていたけど、僕はやっぱりフリーセックスの世界というのは苦手です。

 大宇宙の中での物語なのですが、基本的には船内でのできごとと、船内から見える世界のことが中心なんですね。その広い世界の中での、日常の瑣末さが、余計に「大宇宙ひとりぼっち」というか、大海原に乗り出した一隻の船がポツンと浮んでいる漂流感みたいなものが表れていて、面白いと思いました。

 考えてみれば我々も大宇宙の中にポツンと浮んでいる地球の上に乗っかっているわけです。空を見上げれば、そこに宇宙は広がっています。あんな高みにあるところを、いつか人類がバサード・エンジンを使って、バビューンと駆け巡る時代がくるでしょうか。それとも、現実にはありえないからこそ、我々はそれに憧れるのでしょうか。そんな風に現実と虚構の境界線を混ぜ合わせてくれることこそ、ハードSFの一番の魅力なのかもしれません。いいSFを読みました。
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