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SF素人が空想科学小説に耽溺するブログ。

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SF読もうぜ(286) 小松左京『ホクサイの世界 小松左京ショートショート全集①』

img251.jpg 「これ、フジヤマね。私、前から一度この山を見たいと思ってたのよ」――図書館で二十世紀発行の葛飾北斎の画集を見つけた僕と妻。二十三世紀に大爆発を起こして変形してしまった富士山の江戸時代の雄姿を見たい一心でタイムマシンに乗りこんだのだが、目にしたのは果たして・・・・・・(「ホクサイの世界」)より。ショートショート全集としては初収録になる「靴屋の小人」「かつがれ屋」を含む全四十篇。

 四十篇あるので、感想は◎と☆だけつけることにします。

「さんぷる一号」

 合成食料の試験管「僕」は太り続けていた。ある時、彼はサンプルを日向に届けに行くことになる。

「衝突」

 タイムマシンの試作第一号の運転は失敗した。

「予夢」

 子どもの見た夢。閃光とキノコ雲が世界を覆う夢・・・・・・・。

「何でも見てやろう」

 なぜ俺だけが死なないのか、恋人の死をみとった時、地球最後の男は狂おしくそう思った。

「コップ一杯の戦争」

 酒場のラジオから聞こえるのは、ソ連へのNATOの核ミサイル発射のニュースだった。

「向かい同士」

 団地の向かいに住む男と女。彼らのそれぞれの伴侶は失踪しているらしい・・・・・・。

「新施設」

 マンモス団地のゼロ号ブロックで会ったその人物は新しい棟への道を行くと言うが・・・・・・。

「正月料理」

 階下と階上の筒井家にお歳暮をもらったが・・・・・・。

 こういうSFファンだからわかるネタは好き。でも、「団地ジャーナル」の連載には筒井康隆も参加してたので、一般読者にもわかったのかな?最後の不安なシーンは、普通に部屋にいても僕は感じてしまうのです。

「南の国」

 南国生まれでホームシックの妻に環境ビデオを与えたが・・・・・・。

「上る」

 エレベータのない団地の階段を男はめまいと闘いながら上がり続ける。

「ホクサイの世界」

 大爆発した富士山のありし日の姿を拝もうと二人は二十世紀を訪れるが・・・・・・。

「遺跡」

 秀吉が掘ったといわれる大阪城真田の抜け穴。老人はそれを通り・・・・・・。

 雑学も身について嬉しい話。最後はステロタイプだけど、前半延々抜け穴の話があるだけに、一般小説のようでSFとは思わなかったのが衝撃に伝わったかも。

「ダブル*セールス」

 夫をビデオ・フォンで監視している女性のもとにセールスマンは現われた。

「顔」

 ドアの隙間からのぞくその顔にセールスマンは悲鳴をあげた。

「露の向こうの団地」

 その母子は新しく入居する「団地」に向けて歩いていた。

「伝説」

 川上から流れてきた宇宙船に乗りこんだ男は遠い星から駆け落ちしてきた夫婦と出会う。

「ゴールデンウィーク」

 五月六日月曜の朝――のはずだった。しかし、新聞の時日は四月二十九日をさしていた!

 非日常は日常があってこそ存在するというお話。最後の逆転が面白い。

「火星の金」

 火星の囚人たちはトランクいっぱいの紙幣を奪うことに成功するが・・・・・・。

「スケールの問題」

 宇宙空間で発見した楕円形の物体。その穴の中に入った後、二人が見たものとは?

「花のこころ」

 異星に生えている面白味のない植物群。しかし、ノブコの手によってそれは美しくなり、やがて・・・・・・。

 生きている植物女性版。やはり女性恐怖を利用した作品になっていると思います。植物たちの囁くような声が好きです。

「恵みの糧」

 都市が繁栄を極める一方、山間の漁師の家は貧窮していた。彼はしかしたくさんの獲物を発見する。

「さらば、貧乏神よ」

 先祖代々伝わる壷。その封を破ってしまったために貧乏神にとり憑かれようとは・・・。

 やはり論理的なオチがあると素晴らしい作品になる。膝を叩いてしまいました。

「さとるの化物」

 バーカウンターの隣に座った青年は、私の考えていることを口にしだした。

 中学生のときに初めて読んで、猛烈に感動した作品。民話とSFが繋がっているという奇妙な感覚といい、複雑なストーリーといい、地的会話といい、今読んでも素晴らしいと思います。あと、掲載紙が「洋酒天国」だから、舞台がバーなんだ、という新鮮な発見。

「海底油田」

 サンダカン北北東の海底に石油が噴き出しているのが確認された。ボーリングしてみると・・・。

「淫蕩の星」

 異星で研究しているアレックス夫妻を訪れた「わたし」と妻。しかし、周囲は植物群に覆われ、なにやら怪しげな気配・・・。

「Dシリーズ」

 セックスに関する雑談から、部長はアンドロイドDシリーズを生み出すが・・・。

「沼」

 沼の横を通ると彼は幼き日の罪を思い出す。その日も・・・。

 なんだか可哀想な話ではあるが、夢に押しつぶされる感覚というのは僕もよくわかるし、この人のような状態になっちゃうかもしれないなあと思うと他人事ではないような気がしました。

「誤解」

 その車は主人夫婦にとてもなついていた。しかし、ある誤解が悲劇を招こうとは・・・。

 生きている車もの。なついている車はかわいいけれど、そんなことを!不倫というのは僕にとってあまり好きなネタではないのですが、こういう形でそれが利用されると個人的にはすごく面白いかな、と。

「十一人」

 十人のはずの探検隊が「十一人いる!」。

 「11人いる!」の元型?座敷ぼっこのホラー版ですかね。最後のぶったぎられるようなラストもいい味です。

「お仲間入り」

 無限の宇宙の彼方へ向けて発信された電波に何者かが応えた。十年後、宇宙人はやってきたが・・・。

 厳粛なファーストコンタクトが日常のせせこましいことに引き戻される。お笑いの基本形ですが、面白かったです。ファーストコンタクトを迎えての世界の情勢も面白いですね。

「胎内めぐり」

 観光地化した寺社の胎内めぐりに幼馴染二人で参加するが・・・。

「幽霊屋敷」

 孤独な生活は突然やぶられた。階下でひそひそ話し声がするのだ。これはもしや・・・。

「星野球」

 遠い未来――。大型ミサイルをバットとボールの代わりに繰り広げられる野球のホームランの行方は?

「遺産」

 もっと強くぶってくれ!老人はそういうが娘はできなかった。老人が死後、彼女に残した遺産とは?

「新幹線」

 その宇宙船は地球の側をすごいスピードで通り抜け、ダイヤや金をばらまいていくのだった。いったいなぜ?

「SF番組」

 視聴率の低いためにそのSF番組は製作中止になった。それを下請けの連中に伝えると・・・。

「観月譜」

 お月見の夜。ふと思い出してやってみることにした「人々」。

「お月見の前に」

 新手の広告手段を社長は発見する。

「靴屋の小人」

 その朝、工場長や工員は呆然とした。夜中の中に何者かが作業を終わらせてくれていたのだ。

 不思議な事件の起こる冒頭。そして、意外なラストというのがショートショートの基本ですが、ラストの意外性は弱いと思いますが、逆に象徴性みたいなものが出ていて素晴らしいと思います。最後のセリフが皮肉というか、辛らつで気にいっています。

「かつがれ屋」

 厳格な検査のあとで格納庫に現われた不審な人影。翌日、エンジントラブルが起きるが犯人ははたして・・・。

 なんだか実際にこういう人たちはいるんじゃないかというリアリティがあります。大事故を防ぐための予備的措置で、実際にこういうことをやっていれば、防げる事件はあるのではないかと思ってしまいました。

 総評:ベストは「さとるの化物」。なにげにすべてがレベルが高くてすごいと思います。
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