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SF読もうぜ(289) A&B・ストルガツキー『ストーカー』

img255.jpg 何が起こるか誰にも予測のできない謎の地帯、ゾーン――それこそ、地球に来訪し地球人と接触することなく去っていった異星を探るべく、ただちに国際地球外文化研究所が設立され、その管理と研究が始められた。だが警戒厳重なゾーンに不法侵入し、命がけで持ちだす者たち、ストーカーが現われた。そのストーカーの一人、レドリック・シュハルトが案内するゾーンの実体とは? ソ連SFの巨匠が迫力ある筆致で描くファースト・コンタクト・テーマの傑作。

 いいSF。

 ソ連SFという感じがまったくしない。この国籍不明な感じは後のサイバーパンクに通ずるものがあるかもしれないと思ってしまいました。語り口はハードボイルド。主人公はアウトロー。いい子ぶりが目立つように思えるソ連SFのイメージを見事に吹き飛ばしてくれました。

 アンドレイ・タルコフスキー監督の『ストーカー』の原作となったことで有名なこの作品。映画は見ていませんが、内容はけっこう違うようです。物語展開的には、スピーディーで、作品も短いですし、この作品がタルコフスキーにかかれば、ながーくなってしまうのだろうなあと見ていなくてもわかります。そういえば、映画のほうは宮崎駿監督が一場面だけ見てもすぐにいい映画だとわかった、となにかの本で仰っておりました。

 話の内容的にはやはり、スタニスワフ・レムの影響を受けているような気がします。コンタクトものとはいえ、相手が何を考えているのかわからない。人類の科学では解明できないもの(道具?)を置き去りにしていった異星人。科学者たちはそれを必死に理解しようとし、ストーカーはそれをかすめとり、高値で売り払う。
 しかし、それは作中の言葉を要約していえば、こうなる。「ピクニックに行って、人がそこにりんごの芯や、キャンディーの包み紙などを落として帰ったとする。それがそこに棲息する虫たちにとってどんな意味がある?」

 原題は『路傍のピクニック』。残酷だけれども、素晴らしい題名です(でも、『ストーカー』というインパクトには負けるかもしれない)。なぜ、冒頭で「いいSF」と述べたかといいますと、ここには「人類」という大きなテーマが横たわっているからです。ソ連SFや日本SFが持つ、SFファン向けだけではない普遍性というのを僕は大事に思っています。ストルガツキー兄弟の作品はSFという矜持を抱きつつ、それを世界に発信しているという意味で小説としても一流となっていると思います。最後の一行には、ガーンと心を揺さぶられました。

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SF紹介 ―闇よ落ちるなかれ―

  • by ヌル
  • 2008/05/07(Wed)16:25
  • Edit
こんにちは、A・T様。
『ストーカー』、読ませて貰いました。なんだか、昔の『ミステリー・ゾーン』を思わせる内容ですね。
ソビエトのSFと言うと、ぼくはアレクサンドル・ベリャーエフを思い出します。あの人は、『ドウエル教授の首』や『両棲人間』など、人体改造テーマの作品が多いですね。
GWは如何でしたか? 僕は神保町でブラッドベリの『火星年代記』や、アシモフの『われはロボット』などを買いました。

今日のSF紹介はGWに読破した、L・スプレイグ・ディ・キャンプの『闇よ落ちるなかれ』です。
主人公はアメリカ人考古学者のパッドウェイ。彼はローマの遺跡を調べた帰りに、雷に撃たれます。ふと気づくと、周りにあったビル街が消え、白木綿のチュニックを着た人々が行き交いしています。彼は落雷のショックで、西暦535年のローマにタイム・スリップしてしまったのです!
そこは生きるに難い時代でした。帝国崩壊後のローマは、まさに西洋古典文明の黄昏を迎えつつありました。この暗黒時代の到来を防ぐべく、パッドウェイは蒸留酒を造り、出版技術を開発し、合理的な加算法を人々に教え、歴史のコースを変えようとします。闇よ落ちるなかれと願いつつ・・・。

面白い小説なのですが、古代ローマの歴史は全然知らないので、読み終えるまで、苦労のしっ放しでした。題名は古代ローマの暗黒時代よ、来ないでくれという主人公の願いを指します。表紙の絵も、古代ローマのコロシアムと20世紀の超高層ビルが重なり合ったデザインで、洒落ています。
それにしても、時間旅行と違ってタイム・スリップは、元の時代に戻れる可能性は極めて低いみたいですね。元の世界に戻れなくなった場合は、その時代で暮らすしかないようです。時間旅行って、結構怖いものですね。
ではまた。

Re:SF紹介 ―闇よ落ちるなかれ―

  • by A・T
  • 2008/05/07 22:10
 GWは残念ながら、ずっとバイトでした。働けど働けどなお我が暮らし楽にならず、じっと手を見つめてしまいました。東海の小島で蟹とでもたわむれたい気分です。

 ベリャーエフはハヤカワ・ファンタジイか、ハヤカワSFシリーズの『ドウエル教授の首』をなんども『SFマガジン』の広告で見ているので、読んでみたい一品です。『火星年代記』『われはロボット』は名作中の名作ですね。

 雷に打たれて!『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ですね。海外SFはローマ史について知らないとついていけないものや、元ネタがわからないものもあるので、一度は勉強してみたいのですが。ギボンの『ローマ帝国興亡史』とか・・・・・・。一生の中には読んでみたい作品ですね。

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