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SF読もうぜ(314) 梶尾真治『黄泉がえり』

あの人にも黄泉がえってほしい―。熊本で起きた不思議な現象。老いも若きも、子供も大人も、死んだ当時そのままの姿で生き返る。間違いなく本人なのだが、しかしどこか微妙に違和感が。喜びながらも戸惑う家族、友人。混乱する行政。そして“黄泉がえった”当の本人もまた新たな悩みを抱え…。彼らに安息の地はあるのか、迫るカウントダウン。「泣けるリアルホラー」、一大巨編。

 うーん、面白い。

 思ったよりSF。思ったより熊本。

 設定的にファンタジーに近い小説なのかなあと思ったら、いきなり宇宙空間を漂う生物「彼」の登場。本屋でパラパラめくっていて気がつくとレジにこの本を持っていってました。

 死んだ人間があの世から蘇って、人々のもとに帰ってくる。「死」という人間の最も忌み嫌い、怖れるものをテーマにしながら、深刻になりすぎず、やや甘く、切ない味わいのやさしい小説になっております。久々の梶尾真治を堪能いたしました。
 主人公が反発を感じていた父親、コンプレックスと憧憬を感じ続けていた兄、愛しつづけて来た夫、大好きだった歌手やミュージシャンの黄泉からの帰還。それぞれの人生に影を与えていたその人物の死が、黄泉がえることで癒されていく。「黄泉がえり」の人間に特有の達観と優しさが、それには関係しているのですが、前妻が蘇ってきた旦那さんとかも、きっと癒されたことと思います。いじめによって自殺に追い込まれた少年が蘇ってきて、いじめた側を癒してしまうぐらいなので。
 これが別の作者だったら、フィニイの『盗まれた街』のような感じのホラーになっていたかも。ヒューマニティに溢れる生命体「彼」の存在も最後まで心地がよかったです。

 そして、舞台となっているのが地方である熊本であるというのも、九州在住の自分にとっては大きな魅力です。特に熊本にはよく行っていたりしたので、知っている地名がでてくると嬉しい。熊本の行政の対応を描いたり、熊本弁やら熊本人気質について語っていたり、お隣の県の住民としてはその部分も楽しめました。

 久々に一気読みできた楽しい小説でした。
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