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SF素人が空想科学小説に耽溺するブログ。

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SF読もうぜ(85) 安部公房『第四間氷期』

d9f00c72.jpg 現在にとって未来とは何か?文明の行きつく先にあらわれる未来は天国か地獄か?万能の電子頭脳に平凡な中年男の未来を予言させようとしたことに端を発して事態は急転直下、つぎつぎと意外な方向へ展開してゆき、やがて機械は人類の過酷な未来を語りだすのであった・・・・・・。薔薇色の未来を盲信して現在に安住しているものを痛烈に告発し、衝撃へと投げやる異色のSF長篇。

 名作・・・・・・です。SFという狭いカテゴリだけを勝負にしていなくて、広く世に問う作品。作者が「あとがき」で述べているように、「真の未来は、おそらく、その価値判断をこえた、断絶の向うに、「もの」のように現れるのだと思う。」というその言葉を表現した素晴らしいものになっています。SF界にも、もちろん、そういう作品もあるのですけれど、これが書かれたのは、『SFマガジン』もまだ創刊されていない、1958年から59年にかけて。やはり、世界的な作家はやることが違う。

 SFのSの部分では、さすがに医学部出身だけあって、水棲人の身体構造などの解説は、説得力がある。そして、最後の水棲人の少年の物語は胸に迫ってくるものがある。「人間は悲しいから泣くのではない。泣くから悲しいのだ」。身体構造からくる人間と、水棲人の断絶、というのは、もはや、人類という枠で一くくりにできるものではなく、異星人と同様の関係みたいです。

 ある意味、終末ものともいっていい内容で、やがてくる破滅の姿と、人類の生き残りの姿について、一個人にすぎない主人公の悲しみというか、無力感というか、そこらへんがしみじみとくる印象で、心に深く感じるものがあります。
 テーマという柱が物語全体を支えている、一個の芸術品。そして、それを盛り立てる予言や、水棲人などのスペクタクルな部品たち。芸術性とエンタテイメント性の両立。SFと文学の融合という意味では、ヴォネガットの作品とも似たような感じがあるような気がします。また、これは漠然とした感想ですが、実に日本的であると感じました。素晴らしい作品です。
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