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SF素人が空想科学小説に耽溺するブログ。

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SF読もうぜ(371) 星一「三十年後」(新潮社 ホシヅル文庫)

政治家を引退し、無人島で30年すごしたあと、大正三七年の東京にもどってきた九一歳の嶋浦太郎。知り合いは、なぜかみな若いときのまま……。
星一(星製薬・星薬科大学創立者)が出版した幻のSF小説を、長男の星新一が要約、孫の星マリナが監修し、一世紀を経て特別限定復刊。
もうひとつの星ワールドへ、ようこそ!(新潮社:紹介文より)






 大正三十七年という数字にまず浪漫を感じませんか?
 当時の三十年後を描いたユートピア小説。

 星製薬の開発した薬によって、人類の凶暴性は駆逐され、戦争のない平和な世界となっている。無人島に隠居し、再び東京へ帰ってきた嶋浦太郎氏を待ち受けている科学の驚異。
 乗り物はみな潜水艦になっており、自家用自動車が地べたを這っているのではなく自家用飛行機が空を飛んでいる。夢枕という睡眠学習機のようなものや実在の人間に他人の写真を焼き付ける活動写実などの技術的進歩。なにより回春薬によって91歳の肉体から37,8歳の肉体へよみがえる場面などはうらやましいかぎり。新聞が一日で六版も出るなど現在のネットでのニュースの随時更新などを言い当てているみたい。結婚を会議で諮るなどというのも会議の様子がおかしくてくすりと笑ってしまいました。

 内容もさるものですが、装丁や挿画のセンスもいい。
 発効日はホシヅルの日(星新一の誕生日)。値段は1001円。SFファンなら何の数字かわかりますよね?そんなふうに細部まで凝ってあって、一家に一冊はほしい本となっております。
 要約は星新一(掲載誌は『SFマガジン』)。監修は星マリナさん、ととっても血筋というものを感じ取ることのできるご本でもあり、たいへん感銘を受けしました。
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