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SF読もうぜ(328) 小松左京『小松左京セレクション① 宇宙漂流』

2fcc1ec8.jpeg 太陽系の果て、冥王星から500万キロ離れた有人宇宙灯台に暮らすヨシオは、遭難宇宙船を発見する。その船には、13歳から15歳までの少年少女6名が乗っていた(『宇宙漂流』)。SF界の巨人の傑作短篇を収録したセレクション第一弾。他に『見えないものの影』を収録。
 

 SFジュヴナイル

という言葉に「おっ?」と反応してしまう人にオススメ。「宇宙漂流」「見えないものの影」の二篇を収録。

 「宇宙漂流」は十五少年漂流記の宇宙版かと思いきや、最後には植物型生物の種子をめぐるお話に発展。いい感じのSF具合です。
 短い挿話に、いい感じにひらがなだらけの章題。「なにがいちばんたいせつか」「カールはいったいなにものだっ」「つるのトンネルのむこうには?」など、児童文学に夢中になっていた子どもの頃を思い出し、胸がキュンとしてしまいます。「中学一年コース」という雑誌に連載されていたとのことで、こちらも中学生なみの精神年齢をいかしてドキドキしながら読みました。そういえば同作者の「青い宇宙の冒険」を中学校の図書室でドキドキしながら読んだのをふと思い出しました。ちょっとすれっからしになってしまった気もしますが、今も昔も未読のSFに対するドキドキ感はあまり変わりません。

 「見えないものの影」は表題作よりもはまってしまいました。
 主人公の達夫は確かに机の上に置いたはずの腕時計がなくなっていることに、ある朝気づきます。腕時計をなくしたのは達夫だけではなく、同級生も、そして先生も・・・・・・。いったい何者が、腕時計などを盗難しているのか・・・・・・?
 こんな魅力的な謎から始まってしまうのです。もう、これは先が気になるに決まっているじゃないですか。
 さて、ネタバレになりますが、結論から申し上げますと犯人は鼠なのでありました。鼠が時限装置や無線機を組み立てて、人間を駆逐するのに使用している・・・・・・!いったい何者が彼らを背後で操っているのか?
 読んでいて、開高健の「パニック」という作品を想起させる内容で、迫り来る鼠やゴキブリの恐怖にちょっといやーな気分になりました。やつらはもしかしたら、今この瞬間にもゴソゴソと闇を這いずりまわりながらそんなことを考えているのかもしれません。
 学園ものでもあり、今のライトノベルに近い感覚もあるように感じました。こちらは「高校一年コース」に連載。「宇宙漂流」よりも、さすがに大人っぽい内容。

 少年の心をいつまでも忘れない、そして大人であることからちょっとだけ逃げ出したい人にオススメです。読んでいる一時だけでも過去にタイムスリップできますよ。
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