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SF読もうぜ(234) 「S‐Fマガジン」1965年11月号

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巻頭言

 
最近のてれぽーとでの論争などに関して、SFが現実に関わることを嫌う人がいることを指摘。「SFはポンチ絵ではない」「誤解を敢て恐れずいえば、SFマガジンは商品です。気にいらない靴下は買わないように、SFマガジンも買わないがよろしい」。うーん、福島正実氏らしい言い回し。

野田宏一郎「SF実験室⑤宇宙百鬼夜行之図」

 SFに登場する異星人を紹介。なんといっても一番はやはり『火星人ゴーホーム』の小人でしょう。

コンラッド・リクター「不吉な旅」

 その夜、寝室で何かが起った。暗闇の中を手探りしているうちに、いつのまにか壁とドアをつきぬけていたのだ・・・

 多次元ものです。パラレルワールドへ迷い込んでしまうその様子がなんだか幻想的でよかったです。ただ、なんだか厳しい環境が待っているのが、普通のパラレルものとは違うところですかね。

ルイス・パジェット「ボロゴーヴはミムジイ」

 未来人が無責任に過去の世界に送りこんだおもちゃの一部は、一九四二年のアメリカに到着し、川岸に落ちていたそれを子どもが拾った。その不思議なおもちゃは子どもにどんな影響を与えたか?

 なんだかよくわかんない題名ですが、響きがいいです。子どもというものは環境によって成長するもので、そこに未来のおもちゃという因子が入ってしまったことで起きる悲劇。最初は喜劇なのかなあと思って読んでいたけど、なんだかどんどん深刻な話になっていきました。最後の不思議の国のアリスの引用は、さすがに解説がないと解釈は難しいですね。「ブリリグになると、スライジイ・トーブが、ウェイブの中で、ジャイアして、ギンブルしました ボロゴーヴはみんなミムジイで モーム・ラースもアウトグレイブです」。なんのこっちゃ?

キャサリン・マクリーン「フィードバック」

 すこしでも他人と違ったことをしてはならない。それは民主主義の法秩序をおかす異端者のすることだ――帽子を逆にかぶることも、権威を拒絶することも!

 うーん、このキャサリン・マクリーンという人の紹介されているものは、ほんとうに傑作が多い。はずれがない。この作品は、日本の社会というものによく似ていると思います。人と変っていれば、おかしな目つきで見られ、皆目立たないように中庸を心がける。その窮屈さが僕にはよくわかるだけに、物語に感情移入してしまいました。ただ、惜しむらくは後半にかけて、ちょっと都合いい展開になるところかな。もっと、残酷なラストをもってきてもよかったのではないかと思います。

光瀬龍「星と砂」

 円筒形の身体を持つ異星の植物生命体の部落の長エミラウは人間の登場した船がこの星に到着したことを知らされる・・・・・・。

 部落の中で、役割が決まっているのが面白いですね。群生体のような感じが、個体の違いというものを生み出していてよかったです。

謝世輝「日本月探検隊1990年 その1 ―ある科学者の現実的空想―」

 1990年の日本の月探検隊をルポ風に描く。まずは日本の宇宙開発の歴史から。

大伴昌司「トータル・スコープ」

 『素晴らしきヒコーキ野郎』の紹介。

伊藤典夫「SFスキャナー」

 ジャック・フィニイ「春のゲイルズバーグ」、ロバート・F・ヤング「時間を止めた娘」などの紹介。

SF DETECTOR

 『ソラリスの陽のもとに』などの紹介。オールタイム・ベスト1位なのにまだ読んでないので、近日挑戦したいと思います。

さいえんす・とぴっくす

 無重量ベッドで宇宙の夢を(米)。ウォーター・ベッドです。お金があれば欲しいんですけどね。

草下英明「SF宇宙生物学講座 宇宙は生命に満ちている」

 植物人間、人間同型生命、超能力生命、巨大型と超極微型、水中生命と空中生命などについて考察しておられる。

フリッツ・ライバー「性的魅力」

 アメリカでは下着をつけるのと同様、顔にマスクをつけることがたしなみとされていた。イギリスから来た一人の男は自動車事故から女性を救う。その女性の家に彼は招待されるのだが・・・・・・。

 放射能よけのマスクがいつのまにかブラジャーみたいな感じになってしまった。設定的には笑ってしまいそうなのですが、中身はなかなかシリアスです。英米間の文化的相違みたいなものも見られて、面白いです。ライバーはこういうテーマのシリアスさみたいなのが身上なのでしょうか。

シオドア・R・コグスウェル「侵略報告」

 ヴェガ星系から侵入してきた恐るべき敵を迎えうったのは宇宙ごっこで遊んでいた十一人の子供たちだけだった!

 まあ平凡なお話です。一発屋として知られるコグスウェル氏のようですが、少年の心を描くのが上手な人ですね。

マレイ・ラインスター「だれも宇宙船を見ていない」

 生存に不可欠なホルモンを探して、地球へやってきたその宇宙船に、だれも気づいた者はなかった。目的を果して帰還する時も、だれも気がつかなかった!

 ロボット豹の中で操縦している宇宙人の姿を思い浮かべると、ちょっとおかしいですね。最後に虫にやられるところが、なんとなく好き。

筒井康隆「堕地獄日記」

 増刊号の「堕地獄仏法」の反響を描く日記。笑えます。が、同時に背筋が寒くなります。

小松左京「果しなき流れの果に」

 最終回です。

 総評:ベストは「フィードバック」。表紙では「ミムジイはボロゴーヴ」と書かれているルイス・パジェットの作品もよかったです。後半になるにしたがって、テンションさがってますが、この二作品が面白かっただけに、残りが凡庸に見えてしまいました。
 人気カウンター順位は①アシモフ「まぬけの餌」②「果しなき流れの果に」③石原藤夫「ハイウェイ惑星」④フレデリック・ポール「虚影の街」⑤ファイフ「相対価値」。この号は読んでいないのですが、「ハイウェイ惑星」はぜひ読んでみたいですね。「まぬけの餌」「幻影の街」など名作ぞろいなようです。
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  • by おおぎょるたこ
  • URL
  • 2007/08/20(Mon)22:54
  • Edit
この号はなかなかの著名作揃いで,入手に結構苦労した覚えがあります。
 お目当ては,フリッツ・ライバー「性的魅力」だったんですよね。何かいびつだけれど印象に残る作品です。
 キャサリン・マクリーン,いいですよねえ。作品の質の高さは特筆もので,埋もれては惜しい存在です。確かに,「フィード・バック」はもっとえげつなくしてもよかったと思いますね。「種の起源」のように,より痛みを覚える作品になったでしょう。

翻訳に関する運・不運

  • by A・T
  • 2007/08/21(Tue)22:10
  • Edit
 タイミングによって、翻訳というのは左右される―――何度も訳者あとがきで目にする文章ですが、キャサリン・マクリーンもそんな憂き目にあった一人なのでしょうか。ネビュラ賞を受賞しているほどの作家なのですから、一冊くらい訳出されてもいいと思うのですが・・・・・・。
 ライバーはスペキュレイティブな面が強い作品を書くので、読むときになんだか体力がいりますが、それだけに読みごたえがありますね。たしかに妙に印象に残ります。「バケツ一杯の空気」という題名がおおぎょるたこさんのブログで見かけて気になっているので、いずれ読んでみたいです。

おお、キャサリン・マクリーン

  • by dreamingjewels
  • 2007/08/21(Tue)23:14
  • Edit
 キャサリン・マクリーンは、「接触汚染」と「雪だるま効果」しか読んでませんが、どちらも鮮烈な印象の作品でした。ほんとうに、短編集の一冊でてもおかしくない良い作家ですね。「フィードバック」も面白そう。バックナンバーを探してみようかな。

女性のセンスを感じる作品群

  • by A・T
  • 2007/08/22(Wed)20:58
  • Edit
 どちらも女性的な作品でありながら、男性にとってもものすごく読み応えがありますね。70年代にかけても『SFM』誌上でいくつか訳されているようなので、いずれ読むことになると思いますが、今からとても期待しています。特にネビュラ賞を受賞している「失踪した男」はぜひとも読みたいと思います。「フィードバック」は中世的な社会を現代に持ち込んだ傑作だと思いました。

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