和木市夫『二十一世紀の夢 ある私立探偵の一日』
政府から以来を受けて任務を行う。警察が民営化した感じですかねえ。アクション満載です。
○
アイドリス・シーブライト『聞こえてくる』
聾の少年がその耳をそばだてるとき、それはやってくる・・・・・・。
女性作家の作品。暗い感情のざわめきが伝わってきて、なかなかいいです。
◎
スタンリイ・G・ワインボウム『火星のオデッセイ』
火星へ初めて到達した探検隊。その中の一人が、調査艇の墜落で行方不明になって十日、ついに発見された。そして、彼は語り始めた。火星の不思議な生命の数々を。
地球人とまったく違う生命を登場させた初めての作品という紹介です。ピラミッドを作り続ける珪素生物だとか、太鼓を叩く意味不明の生物だとか、不思議な生き物がでてきて、クラクラするほどの面白さ。よかったです。
◎
レイ・ブラッドベリ『対象』
退屈な生活に嫌気がさしているロビイ・モリスンのところへ、「なにか」が墜落してきた。
こういう認識論の作品は好きなんです。現実に対する挑戦みたいなものがあって、いいんですよねえ。逃避願望が強い人にはうってつけの作品です。
○
ポール・アンダースン『時は癒す』
末期の癌にかかった青年は、時間の流れのない〈大地下室〉へと入り、未来の治療法にのぞみを託した。
未来にいった青年が、その価値観の違いに呆然とするさまがいいです。スカートしか身に着けていない看護婦とか、そりゃ、すごい未来だねえとか思ってしまいました。苦いラストも、よろしかった。
○
C・M・コーンブルース『蝕むもの』
その子どもは人の心が読めた。彼は自分の環境に我慢しきれずに、そこを逃げ出した。そして、彼は自らの「飢え」を満たすために、静かな殺戮を繰り返すことに・・・・・・。
たかぶった感情を食うというその行為がおぞましくも素敵。どういった風に人々の感情を昂ぶらせるかというその手法も、興味深くていいです。ラストはいまいちな感じがしましたが。
日下実男『海洋物語』
古代の航海者の人々のお話。今号は歴史の話で、けっこう楽しめた。
SFでてくたあ
松本清張が『女性自身』に関東一帯を滅ぼすミサイルが発射されようとしているという設定のもとにいろいろな状況を描いた『神と野獣の日』を連載しているとのこと。その他、サンデー毎日別冊にSF特集。十人がSF作品を発表している。文学界で未来のヴィジョンに対する批判がなされており、石川喬司が〈図書新聞〉において同人誌の二作品(豊田有恒『遥かなり幻の星』眉村卓『滅びざるもの』)を例にひいて、SF作家の未来ヴィジョンを論じているらしい。これ以前の号でも言及されていた『朝日ジャーナル』においてのSF論と併せてこれらも読んでみたいなあ。
◎
手塚治虫『SFファンシー・フリー 第4話 そこに指が』
なにかに見られている、監視されている。人々は自らに向けられる視線に耐えられなくなってきた・・・・・・。
うーん、こういうメタフィクション的な作品は大好きなので。オチがよかった。
さいえんす・とぴっくす
現像不要の写真乾板(英)。ポラロイド・カメラに使われているやつですかねえ?
◎
小松左京『蟻の園』
団地の13号棟で、幼い子どもが行方不明になった。調査に赴いた警察は周囲の棟と、その棟を比較して奇妙な事実を知る・・・・・・。
うーん、面白かった。今回はお話が壮大な感じで、しかもサスペンス的な要素がある。ラストがよく理解できなかったのが残念ですが。最初の思わせぶりなお話の入り方が、お話に一つの方向性を確立されていて、まとまっているいい作品だと思いました。
○
光瀬龍『カビリア4016年』
シティから逃亡したものは重罪―――。宇宙艇で逃げ出した二人の人物を「私」は追った。しかし、彼らの航跡は途中で消えていた。
なんか漠然とした感じで読んでいたので、あまり意味はとれなかったのですが、ラストの詩的な感じがよかった。
星新一『SFファンタジア』
○
『羽衣 SFふぁんたじあ・じゃぽにか』
天女の羽衣の話をSFに翻訳。なかなか面白い。
◎
『ジャックと豆の木 SFふぁんたじあ・ぶりたにか』
題のお話をSF化。当世風のC調に仕上げているのがなんだかいい。乾いた文章とマッチして、面白さが増している感じです。
大伴秀司『SFを創る人々 その2 日本SF作家クラブ』
まだ、正式には発足していないようですが、メンバーは星新一、矢野徹、半村良、光瀬竜、川村哲郎、斉藤伯好、斉藤守弘、福島正実、森優、小松左京、石川喬司だそうです。いろいろ真剣な意見が交わされております。
斉藤守弘『サイエンス・ノンフィクション〔5〕巨石は語る』
ピラミッドやストーン・ヘンジなどのお話など。
草下英明『スペース・ファンサイクロペディア21 狂った星座』
時間が経てば、星座の見え方も違ってくるというお話に感心しきり。
『銀河帝国―ファウンデーション建設篇―』
貿易商人の章。これで最終回。残りは、ハヤカワ・SFシリーズで読んでね、ということだそうです。
総評:ベストは『火星のオデッセイ』。みょうちくりんな生物がかわいらしかった。小松左京の作品もそれに肉薄するぐらいおもしろかったと思います。今号は全体的に好きな作品が多かったです。
日記において、福島さんがSFの話を女性にするときに、女性の反応がポルノグラフィーを見たときのような感じに思えたとおっしゃってます。当時のSF事情が見えるような見えないような。
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