人々は、森、農場、廃墟、迷路などがある〈船〉が世界のすべてと信じて、種族ごとに生活を営んでいた。だが、この〈船〉は、遠い昔に人類がはじめて送り出した恒星間宇宙船だったのだ!航行途上の反乱で航宙士のほとんどが死に絶え、長い年月のうちに〈船〉は中世的迷信の世界に変貌してしまっていた。しかし、ある日、一人の若者が〈船〉の中を探検しはじめ、真相を明らかにしようとするが・・・・・・壮大無比な宇宙SF!
巨大な建造物の中で、その果てもわからぬまま生活しているという設定がいいですよねー。二瓶勉の『BLAM!』とか、筒井康隆の『遠い座敷』とか、こういったシチュエーションが大好き。
巨大宇宙船の中で、中世的迷信が人々を支配している。チャド・オリヴァーの短篇に似たものがありましたが、こういったものを打破しようとする主人公と言った展開がいいです。
途中で出てくるミューティのキャラクターもいい。特に双頭のジョウ=ジムというミューティの首領がよかった。ラストのシーンには思わず涙ぐんでしまいましたよ。
最初のほぼ無重力状態での行動など、現実では味わえないことを体験させてくれるSFの醍醐味が、この作品にはあります。
ただハインラインの女性観にはあまり共感できないですねえ。特に本書の最後の方の女性の扱い方はひどすぎる。
まあ、でも、『強敵』という短篇とか、『夏への扉』の女の子とか、男性にとって都合のいいキャラクターは嫌いではないですけどね。
ハインライン味のよく出た、鮮烈なイメージの残る作品でした。
PR
COMMENT