時に西暦2076年7月4日、圧政に苦しむ世界植民地は、地球政府に対し独立を宣言した!流刑地として、また資源豊かな植民地として、地球に巨大な富をもたらしていた月世界。だが、月が人間にとって過酷な土地であることに変りはなかった。横暴を極める行政府の圧政に対し、革命のための細胞を組織化し、独立運動の気運を盛りあげていったのは、コンピュータ技術者マニーと、自意識を持つ巨大なコンピュータ〈マイク〉。だが、かれら月世界人は一隻の宇宙船も、一発のミサイルも保有してはいなかったのだ!1968年度ヒューゴー賞受賞の栄誉に輝くハインラインの問題作!
面白かったです。
とにもかくにも、壮大な革命話で、圧倒されながら読んでいました。
冒頭から、「親父はおれに二つのことを教えてくれた。〈余計なことはするな〉、それに〈カードはいつも切れ〉だ。」なる文章が出てきて、(意味はよくわからんが、かっこいーじゃねえか)と思いました。矢野徹さんの解説も、読みやすく、かっこよくて、いいです。
自我を持った人工知能マイクという魅力的なキャラクターが登場します。人間の性能を遥かに超えた思考機械が、革命の中核を担う。マイクなくして、革命は起こせませんでした。ラストの岩石落とし、メガンテが炸裂しまくりな様子は大興奮でした。
月世界での社会は、僕にはなじめないものでした。論理的な面白さはあると思うのですが、やはり、心理的な抵抗は大きいです。結婚形式であったり、月人の行う刑罰であったり、どうも僕には無理です。結婚については、独占欲がそれを阻害するだろうし、後者においてはやはり第三者的な目は必要だと思います。
搾取されている植民地が、本土に対して独立を試みる。独立記念日のお話といい、アメリカの精神を説きつつ、一番の悪者として北アメリカを徹底的に破壊してしまうその様子に、感心しました。ただのアメリカ万歳小説でないところが、いいですね。
ただ、(戦争では必要なんでしょうが)情報操作とか、エリート主義な政策みたいなのは、なにかちょっと賛成できないなあと思いました。いい意味でも、悪い意味でもアクが強い小説だと言えるでしょう。
文庫で589頁という長い作品です。途中でハインライン節が暑苦しくなってきたりもしたのですが、けっこう一気に読み進めました。それだけ、作品の中に入り込めたということでしょう。ヒューゴー賞受賞にもうなずける傑作でした。
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