ゴードン・R・ディクスン『テクニックの問題』
ジェフリイ・ウィロウビイはシャイなあまり恋人に見捨てられた歯科医の青年。悲嘆のあまり、彼は宇宙軍の軍医に志願し、宇宙へ旅立った。そこで彼は絶世の美女からアソナという生物の歯を治してほしいと依頼を受けるのだが・・・・・・。
僕はヘタレなので、こういう情けない主人公には感情移入してしまいます。哲学的命題ばかり追いかけて技術的な問題に疎いという生物はクラークの短篇にも登場しますが、こういった宇宙の生物の生態って面白い。
ロバート・シェクリイ『発射四時間前』
二十三世紀、人種的偏見はなくなった。ところが、ある優秀な宇宙船乗組員が新任乗組員との航海を「人種的偏見」を理由に拒否しているという。船長は頭を悩ませるが・・・・・・。
人種的偏見を高い視点から捉えた作品。懐が深いですね、シェクリイは。こういう世界的な問題を扱えるから、SFが好きです。
アイザック・アシモフ『夢を売ります』
他人の空想夢を一つの作品として楽しむことのできる世界。しかし、夢を創り出す「夢想家」には人間として問題が・・・・・・。
「芸術家」が実生活においては劣った人間である、という思想を体現した作品。アシモフ自身、そう感じていたのですかね。短編集にそれを謳った詩があったような覚えがあります。
岡俊雄『SF映画展望 H・G・ウェルズのSF映画・上』
ジョージ・パル監督の「宇宙戦争」は一度は見なくちゃと思っているのですが・・・・・・。レンタルビデオにはあまり置いてないですよねえ。
ポール・アンダースン『後進性』
百万年の文明を誇る銀河宇宙連邦から、宇宙人の使節団が訪れた。さてどう応対したものか?
むちゃむちゃ面白いです。最後のオチには笑ってしまう。福島さんはこの物語を地球人(日本人)、宇宙人(戦後占領下のアメリカ人=GHQ)のように捉えています。時代を感じますね。
S・Fらいぶらりい
ここ十年間の、傑作二十点のリスト。
日下実男『地球物語(4)』
宇宙雲が擬集して星ができるまでを解説。
さいえんす・とぴっくす
ソ連に「宇宙人はすでに地球を訪れた」と唱える学者が現れたらしい。「
ジョナサン・スウィフトが「火星に衛星がある」と予言したのは宇宙人が地球人に残した知識を、伝え聞いたからだ、というのだ」そうです。う、うけるー(笑)。この欄ではないですが、「翼の生えた猫」のニュースなど、トンデモなニュースがけっこう載っているのが嬉しい。
フィリップ・K・ディック『パパに似たやつ』
チャールズは父親がにせものであることに気づいた。くず入れの中には本物のパパの抜け殻が・・・・・・。彼は友人のペレッティと共ににせものを監視するが・・・・・・。
読むのはこれで三回目だ。河出の年代別SF集成、ディックの短編集、そして今回。それだけ名作だってことの証明だろう。面白い。
アイザック・アシモフ『捕獲と脱出 引力の問題』
アシモフ博士の科学エッセイ。脱出速度のことがよくわかってよかった。
キャロル・エムシュウィラー『狩人』
氷に閉ざされたジャクサの惑星。狩人のご主人を持つ犬のクィーンは主人の獲物となる生物にテレパシーでこう語りかけられる。「チイサナドレイヨ、コノジユウナセカイデ、オマエハ、イッタイ、ナニヲシテイル?」。
不思議な雰囲気の作品。犬が主人公。犬の忠実さが可愛らしいです。いかにも女性作家らしい優しい作品です。
高橋泰邦『“白鯨”応答せず』
一億二千万の日本人の希望と期待を乗せて、四万五千トンの原子力潜水貨物船「白鯨」はいま北極点の氷原下をゆく!!
うーん、ナショナリズムが少し出すぎてあまり好きになれない作品ですね。ジェネレーションのギャップを感じます。
都筑道夫『機嫌買いの機械』『機械がうんだ機械』
連作ショートショート。そういえば都筑さんの作品はけっこう読んだことがある。とにかく翻訳の硬い文章を読んだ後でこれらの文章を読むとスラスラ読めます。
阿部公房『完全映画(トータル・スコープ)』
今までのような映画でなく、直接脳細胞や神経を刺激する電気的刺激による直接体験映画、つまり、トータルスコープという新しい形態のメディアがつくられた。しかし、その試写の日、事件は起きた。
さすが、世界の阿部公房。面白いです。しかし、あまりに大衆的なものを意識したのか、ちょっとバカにされているような感もありますが。でも、このラストは台無しじゃない?
田口泖三郎『太陽電力会社 設立四十周年記念仮空公園』
太陽発電の可能性を太陽電力会社四十周年(西暦二千年)の講演で架空に語る。
太陽熱を海上で直接電気に変える。さらに、発電だけでなく、
台風も止まり、モンスーンも調節され、気候も冷暖房で思いのままだ!ちなみに私の住む地域では昨日恐ろしい台風が通過していきました。さらに、
北極と南極の氷を全部溶かした上、海水の量を調節して、陸地を増やすという!ばら色の未来だ!実現してたらなあ。関係ないけど、全体的に誤植が多い。
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