第一銀河帝国は、何世紀にもわたってすこしずつ、だが確実に退廃と崩壊をつづけていた。しかし、その事実を完全に理解している人間は、帝国の生んだ最後の天才科学者―――ハリ・セルダンただ一人であった!帝国の滅亡と、その後につづく三万年の暗黒時代を予言したのだ。だが人類にとって救いがないわけではなかった。滅亡へと向かう巨大な慣性を、ほんのすこしでも偏向できれば―――かくて暗黒時代をただの千年に短縮するため、セル段はふたつの〝ファウンデーション"を設立したのだが・・・・・・。巨匠が壮大なスケールで描く宇宙叙事詩!
いやあ、面白い!
アシモフの未来史シリーズ。歴史書ですね。政権の中枢の人々の様子が歴史の変革が起きる時期に沿って描かれています。斬新な発想も、いつかは保守的なものに変貌していく。世の中の無常を感じます。そして、その保守的な考え方に、革新的な考えを持つものが挑んでいく、といういつものアシモフの構造になっています。
人類補完機構シリーズや、ハインラインの未来史と比較しても、まったく違う、一貫した構成で、読みやすくわかりやすいです。科学の進んだ未来で、宗教的な考えが支配している。この中世的な社会は、映画『スターウォーズ』を思い起こしました。おそらく、ルーカスも影響されているのでしょうね。
ハリ・セルダンという心理歴史学者は「予言者」としての役割でもありますね。「人類の利益」という最大の目的を達成するために、奮闘する人々の姿は、聖職者たちの活動と似ているものがあります。物語全体が宗教的なにおいを帯びているのは、そのせいでしょうか。とにかく、普通の小説以上のなにかを感じました。
もちろん、これ一冊で終るはずもなく、シリーズの先はなかなか長そうです。あせらず、気長に読んでいこうと思います。
アシモフの他作品の感想
『神々自身』
『火星人の方法』
『サリーはわが恋人』
『鋼鉄都市』
『はだかの太陽』
『永遠の終り』
『ファウンデーション』
『ファウンデーション対帝国』
『第二ファウンデーション』
『ファウンデーションの彼方へ』
『ファウンデーションと地球』PR
COMMENT
久々のTBですが
TB大歓迎です
性的な描写にしても、アシモフの場合は科学的見地から見てのもので、古風な倫理観を貫いているどっしりとした方だなあといつも感心しきりです。だからこそ、SFのメインストリームとして、大家として彼は尊敬されているのだと思います。そう考えると、その向こうを張ろうとしたニューウェーブなどが傍系として、一部の読者を置き去りにしたのもしょうがないのかなと考えました。SFが全体的に低調にに向かったとき、クラークやアシモフが表舞台に復活してきたのも、そのことが関係があるのかなあという気がします。と、長いお返事になってしまいましたが、とにかく要はアシモフと『銀河帝国興亡史』はすごいなあということです。