と、いうわけで、お気に入りの作品を。
『48億の妄想』
ブーアスティンの『幻想の時代』のをふまえた「擬似イベントSF」の決定版。なにが本当の現実なのか?これをテレビという装置を通して、追求した作品。確固とした現実なんて、この世には存在しないのだ。それが、筒井作品には通底していると思います。それを表現しているラストシーンが好き。
『堕地獄仏法』
えー、先日も感想書いたので割愛しますが、何度読んでも怖いです。
『ラッパを吹く弟』
二ページ足らずのお話なのですが、シュールレアリスムっぽい幻想的な作品。特に穴に入ってくるところが好き。
『チューリップ・チューリップ』
分裂し続ける自分。わらわらと増え続ける様子が笑えます。最終的には哲学的?になっていく。
『マグロマル』
「コミュニケーションの不毛」を描いたと本人の語る一連の作品群の中でも代表作である作品。最後のセリフにかなり笑いました。途中のアボン・アボンというやたら劣等感に苛まれている宇宙人、忘れた頃に食事へ出かけるガドガド族などにも笑います。
『末世法華経』
『堕地獄仏法』と同じく、例の団体を笑い飛ばす作品。しかも、今度は教祖本人が登場して、集会を見に行くという奇抜な発想。いやー、笑えます。
『カメロイド文部省』
お雇い異星人として、小説のない星に行き、小説を書くことになった男の話。手紙のギャグに笑い、カメロイドの文部大臣の発言に笑い、通俗道徳を打破するドタバタに快哉を叫ぶ。この作品集の中で、一番好きな作品かもしれない。
『トラブル』
パイ投げを人間の体を使ってやらかすという危ない作品。首が宙を飛び、目玉はほじくりだされ、鼻はねじり取られ、手足はちぎられ投擲される。ひえー!石川喬司さんが筒井作品を取り上げるときに例にあげるのがこの作品。たしかに「人=もの」です。筒井作品の中においてもショッキングな作品。僕の中では『死に方』『最高級有機質肥料』と共に三大ショッキング作品の中の一つです。
『堕地獄日記』
『堕地獄仏法』を載せたあと、筒井さんにかかってきた学会員の電話や、それ系の新聞に載った反響を描いたエッセイ。エッセイも筒井康隆にとっては一つの完成された作品。かなり面白怖いです。
総評:全27篇。『かゆみの限界』とか『タック健在なりや』『お玉熱演』とかもいいです。この頃の作品は本当に頭にクラクラくるなあ。ベストは『カメロイド文部省』です。
PR
COMMENT