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SFとは屁理屈だ! 島本和彦『ワンダービット』

3ba2c066.jpg 首藤レイという発明家をパーソナリティーとした島本和彦の連作SF短編集。

 SFはやっぱりバカ話がいい。この連作短編を読むとそう思います。ざっと、紹介するだけで、なんだか笑けてきてしまいます。「ゴキブリと遠赤外線サウナに一緒に入ってしまったことで、ゴキブリの能力を手に入れたヒーローを描く『コックローチマン』、「自分の息子をヒーローにするために悪の組織を作ってしまう男の物語『怪奇カメムシ男』」、「自然界のバランスを考慮したうえで、上陸した怪獣を殺さずに倒すため、女子プロレスラーを巨大化して戦わせる『東京大パニック』」、「ボールが手に吸い付いてしまうサッカー選手の悲劇と栄光を描いた『虚実録プロサッカー選手物語』」などなど、変な話が盛りだくさんだ!

 それだけでなく、SF寓話的な話も、たくさんあり、島本和彦の熱い屁理屈を魂に刻み込めます。「マスコミに踊らされている人々が“おどるアホウ菌”によって、実際に踊りだしてしまう『ダンシングシンドローム』、「安価に時間を巻き戻す装置を作ってしまったことによって起こる恐怖を描く『タイムマシンの恐怖』」、「ことばを極めることを目指す女性を描く『ことば道』など、テーマを追求した作品には、島本先生の別の作品集にはない味わいがあると思われます。

 その中でも特にオススメしたいのが、『フィーリングカップル100vs100』。
普段多忙で出会いの機会のない正義のヒーローや悪の怪人二百人が一同に集い、お見合いパーティーをする物語。女性の要望で「正体を隠して変身してる人はちょっと困りますう」「5人で戦ってる腰抜けはごめんだねっ!」というのが出たり、悪に寝返ったりするやつがでたり、「あたしイエローってやだなー」とカラーを否定されたり、戦闘員(ショッカー)だからという理由で振られたり・・・・・・。もう、すべてがツボに入りまくりです。

 このマンガで一番お気に入りの名言は、「人生戻る必要なし!」(『タイムマシンの恐怖』より)。いつも通りのいい詭弁が心に突き刺さる素晴らしい作品たちです。ちなみに炎尾燃が掲載誌の編集者とカラオケ対決をする番外編も収録。熱いです。
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