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SF読もうぜ(203) 小松左京『復活の日』

img147.jpg 人類に明日はあるか・・・・・・。BC(生物化学)兵器として開発された新種の細菌、それは、ちょっとした偶発事故からでも、人類を死の淵に陥れる。
 ――吹雪の大アルプスで小型機が墜落、黒こげの乗員と部品や胴体の破片が発見された。この機には、秘密裏に開発された猛毒性を持つMM菌のカプセルを搭載していた。わずか摂氏5度でも気ちがいじみた増殖をはじめ、ハツカネズミが感染後5時間で98パーセント死滅!MM菌の実験データは冷酷に告げている。
 春になり雪どけがはじまると、奇妙な死亡事故が報告されはじめた・・・・・・。
 人類滅亡の日も刻一刻と近づく。著者最高のSF長編小説。

 感動しました・・・・・・。

 まずひとつ確認したのは、破滅ものってやっぱり素晴らしいなあということです。人が次々死んでいくものが好きなんて、なんて残酷なんでしょう。それでも、好きなものはしょうがないやい!

 今回、人類の滅亡の原因は細菌です。実際は細菌よりちっちゃい核酸兵器ということだそうです。最近、はしかの流行なんかで、少しびびっていたところもあるので、なんだか身近だなあと思いました。数年前、アメリカで炭疽菌騒ぎなんかがありましたけど、細菌兵器は今でもどこかの研究機関で開発され続けているのでしょうか。こわいです。鳥がバタバタと最初に九州地方で死んでいくのですが、そういえば宮崎で鳥インフルエンザ騒動があったばかりだし、薄ら寒い気持ちにさせられてしまいました。

 基本的には理性的に人びとは死んでいきます。小松さんは繰言のように人間の卑小さを伝えてくれるのですが、途中、もういいから早う話を進めてくれや、という気持ちに正直なったことも告白しておきましょう。時間に余裕のあるときは、こういうのも楽しめるんだけれどねえ。とにかく、けっこういい人たちばかりだなあと思いました。

 筒井さんの『霊長類南へ』と違って、小松さんは基本的に登場する人物や人類に、ひどく感情移入してらっしゃるんだと思います。それが、破滅ものとはいえ、物語に漂う「やさしさ」の原因になっているのではないでしょうか。ラストの大掛かりな仕掛けには「ほほお」と感心するしかありませんでした。人類のはかなさ、無力さ、愚かしさを思い知り、それでいて人間の善性と、生へのポジティブな視点に感動できる、超大作でした。
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