時のはざまを彷徨し未来の安寧と平和のため過去を矯正する資格をもつ〈永遠人〉。厳しい訓練と教育を受けたハーランは15歳のときに、時間管理機関〈永遠〉の研修生となり、やがてもっとも有能な技術士の一人となった。彼の担当は482世紀。この世紀は人工生殖が隆盛をきわめた唯一の時代で、いまや〈現実矯正〉が必要とされていた。だが、〈普通人〉の美しい女性、ノイエスとの出会いは、彼の運命を狂わせた。〈現実矯正〉の結果は、愛するノイエスの消滅をも意味していたのだ。執行日は容赦なく迫るが・・・・・・!?ミステリ・タッチで描く巨匠アシモフ唯一の時間テーマSF!
なかなか楽しかったです。
人類の最大多数の幸福のため、現実を改造する永遠(エターニティ)。これは怖い。僕なんかいつ消されちゃうかわかんないよ。いくらよりよい世界になるとはいえ、僕は大量殺人に近いと思いましたね。
色ボケしていった人物が実は操られていて・・・・・・というのは、『ファウンデーション』シリーズでもあったような気がしますが、やはりストレートに書くのは気恥ずかしいのでしょうか。個人的な事情でエターニティを破壊しようとするハーランの気持ちが僕にはあんまり理解できなかった。
アシモフ唯一の時間ものの長篇だそうですが、時間ものが確かに好きでないような展開にうなずきました。言ってみれば身も蓋もないんですね。現実の改変は結局人類を破滅に導くだけだし、現実への作用はないほうが、人類は救われるんだ、と。
組織はいつしか保守的になり腐っていく。エターニティは悲しいほどお役所体系です。ですが、どの組織も大きければ大きいほどたいていはそうなるわけで、結局は人間を、人類を信用するな!と。人間が神のように世界に手を加えるなんて、子どもに銃を渡すようなもんだよー、ということでしょうか。ですが、結局放っておかれた現実で原子爆弾が1945年に落ちたくだりを読むと、なんだかすごーく嫌な気分になりましたがね。アシモフは人類の愚行の例として出したんでしょうけど。
後半の事実が次々暴かれていくところにはなかなか興奮できました。アシモフらしい、SFサスペンスだと思います。
アシモフの他作品の感想
『神々自身』
『火星人の方法』
『サリーはわが恋人』
『鋼鉄都市』
『はだかの太陽』
『永遠の終り』
『ファウンデーション』
『ファウンデーション対帝国』
『第二ファウンデーション』
『ファウンデーションの彼方へ』
『ファウンデーションと地球』PR
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