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SF読もうぜ(216) デイヴィット・ブリン『ポストマン』

 最終戦争ですべてが崩壊し、廃墟となったアメリカで、人々は小さな集落をきずき、やっと生きのびていた。ゴードンは、そんな世界をひとりで生き抜いてきた男だった。だが、山中に遺棄された郵便配達のジープを発見したとき、彼の運命は大きく変わった。郵便配達の制服を着たゴードンは、アメリカの再建をめざし、孤立無援の戦いに挑むが・・・・・・キャンベル記念賞、ローカス賞受賞、ケビン・コスナー監督・主演で映画化の話題作。

 面白かった・・・・・・。第一章の導入部がとても感動的でした。

 荒廃した未来で生き抜く旅人という大好きな設定に加えて、集落社会を「国家」という幻想でまとめていくゴードン。自らがそうしようとしたわけでもなく、それでも英雄に祭り上げられてしまう彼の責任感というのが、心に響きます。そして、なによりも好きだったのは、手紙が集落から集落にたどり着き、誰かの消息を聞くとか、手紙を受け取るシーンです。思わず涙ぐんでしまいました。

 だから、後半の展開は僕はなんだかついていけなかった感があります。特にゴードンの恋人のフェミニズム思想とか、最初のほうのシーンが現実とつながりを見せていただけに、急激にストーリーが「お話」の領域に入ってしまって、そのギャップが埋まりませんでした。サバイバリスとの戦いも、改造人間も同じように感じました。
 というのは、荒廃した世界で集落と集落の間をやりとりする郵便配達人というそのアイデア一つが、ものすごく魅力的すぎることが、僕が他の設定を受け入れられなかった原因だと思います。このアイデアがあるのだったら、もっと別の方向性で、例えば人と人との繋がりの物語にできたのになあ、とかここにない物語ばかり夢想してしまうからです。話は防衛とか、国家とか、そのような方面に変わってしまって、残念なところがありました。

 けれども、郵便制度というのが日本の近代化に欠かせなかった要素であることを思い出したり、それが公共のものだったのが民営化されてしまってどうなるのだろうかとか、国家というのはやはり集団幻想なのだろうかとか、武力の行使はどういう意味を持っているのだろうかとか、さまざまなことを考えることができてよかったと思います。

 話の統一感に欠けた物語だとは思いましたが、それを補って余りある魅力的な設定の物語でした。
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