SF素人が空想科学小説に耽溺するブログ。
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◎「天国の門」
それほどの偶然というわけでもないが、ついにひとりのエイリアンが地球に着陸したときにめぐりあった相手は善人だった。
いい話かと思いきや、最後にひっくり返してくれました。途中の奇妙な旅程も楽しかったです。
◎「ビーバーの涙」
男たちは袋にビーバーを詰め、荒れはてた鉱山まで連れていって放す。ビーバーは環境をきれいにかえしてくれる。ある夜・・・・・・。
うーん、ひどい話やー。ひどいけど、そこがいいぞー。こういう、もうどうにもなりませんー、というお話は大好きです。生物の話を人間に移し変える話も好きですしね。
×「おお、わが姉妹よ、光満つるその顔よ!」
その娘は病院を抜け出して夜の街へと歩き出した。
ムリ。
☆「ラセンウジバエ解決法」
男性の暴力は女性を駆逐しようとしていた・・・・・・。アランは愛する妻と娘を助けようと、駆けつけようとするのだが・・・・・・。
うわー。残酷。ここまで、男性を悪者にされるともう黙ってみてるしかありません。実際、そういう存在なのかもしれないし。とにかく、フェミニズムSFは苦手なのは、苦手なのですが、こういう作品であれば好きです。これも「ビーバー」と同じような構想で、オチは「天国の門」と同じようです。
◎「時分割の天使」
ジョリヤンがそう念じたから、この事態は起こったのか・・・・・・。子供たちは眠りにつきはじめた。
眠りにつく世界というのは好きなんですねえ。気持ちよさそうですが、起きてる人たちはやっぱりそんなこといってられないなあ。寝てるほうが幸せなのか?
☆「われら〈夢〉を盗みし者」
長い間の苦しみはもう終るのか。テラ人の船へ彼女は乗り込んだ・・・・・・。
すごいぜ、ティプトリー・・・・・・とここまでくれば思ってしまいます。とにかく痛い話を書かせれば、上にでるものはいない。なんだか可愛らく思えてしまう異星人が、ここまで復讐心を抱く。それだけ、テラ人はいやな奴らです。すごく印象に残る作品です。
◎「スロー・ミュージック」
旅の男ジャッコは、ピーチシーフという女性と出会う。
ラストはいつもどおり悲劇のような終りかたですが、耽美な作品にこのラストはよく似合う。黄昏の時代に旅に出る二人の男女の美しい物語。漂う雰囲気を味わう作品です。
△「汚れなき戯れ」
銀河ニュース社の記者はその男にインタビューを試みた。異邦の惑星を始めて訪れる人物は奇想天外な体験をえるがゆえに・・・・・・。
なんか「そして目覚めると~」の劣化版に見えてしまったので。
☆「星ぼしの荒野から」
遥か深宇宙で進化した生命体グレックス――エンギという名の幼仔が冒険を求めて行方をくらました時、群れは大騒ぎとなった。ただちに2体の斥候が選ばれ、その跡を追った。だが怖るべき捕食生物〈大食らい〉もまた、その仔を狙っていたのだ。
いい話やー。エンギの残した志向性から星に焦がれる少女。そのろくでもないパパ。そしてその秘書。この三人の人間関係の描き方が非常に巧く、そして最後のエンギの感動的なセリフまで、温かさが僕を包み込んでくれました。こういう作品も書くんですねえ。
☆「たおやかな狂える手に」
CPはひたすらに星の世界へと突き進んでいった。彼女はその心の奥に誰にも悟られないように、隠していたものがある。それは自分に呼びかける声のこと。
愛。性別を肉体を人種を超えた愛。遥かなる距離を越えて届いた声。ひたすらに心にこみ上げてくるものがある。悲恋ではあるけれども、それ以上に心で結ばれた二人の関係に祝福を与えたくなる物語である。ありがとう、ティプトリー。
総評:ハイ・クオリティ。どの物語も、どこか心にズキンとくる印象を与えます。ティプトリーは書かざるを得なかった人、という感じがします。猛烈に書かなければいけない、訴えねばならない心の軋りが物語の中から聞こえてきそうな気がします。ベストは「われら夢を盗みし者」。しかし、すさまじいともいっていい物語がたくさんあって、すごいです。
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