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SF素人が空想科学小説に耽溺するブログ。

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SF読もうぜ(266) 小松左京『エスパイ』

 “エスパイ”――それは、人の心を読み、物体を透視し、意志の力で物体を動かす超能力を持つ者たちの諜報集団である。ソ連首相暗殺計画の阻止を命じられたエスパイの一員・田村良夫は早速行動に移るが、彼の前に現れた敵も超能力者の集団だった!ニューヨーク、バルセロナ、イスタンブール、ウイーン、遂には宇宙へと繰り広げられる国際的陰謀の首謀者ミスター“S”の正体とは果たして何者なのか?

 よかった。

 超能力者の集団が、善意のスパイ組織を作り大活躍。しかし、今度は悪の超能力者軍団が世界を牛耳ろうと敵対します。超人思想を前面に押し出す悪の軍団はこれでもかというぐらいの悪役ぶりで大満足。無差別殺人を行おうとするところなんか、あまりの悪行ぶりに逆に感動してしまいます。悪の軍団はこうでなくちゃね!

 死にかけると新たな能力を開発するというサイヤ人のような生態を見せるヨシオ。ヨシオのこの姿は『時をかける少女』の主人公にもつながるような気がします。そして、かわいそうな目にあっちゃったがためにキャリー化してしまうマリア。山田風太郎の忍法帖シリーズと一緒に連載されていたためか、戦いも派手です。テレポーテーションを駆使しつつ戦うあたりが一番よかった。

 黒幕のミスター“S”なのですが、これはミスター“es”ということでしょうか?悪いのは人類自身なのだよ。人類を実験体にしている一段上の生物なのですが、人間の倫理とはかけ離れた思想をお持ちのようで、理解は及ぶものの納得はできません。それは僕が下等生物である人間だからなのでしょう。こういう一段階上の理解できない奴らがでてくるとムカつく一方で、なんでこんなに読んでて楽しいんですかねー。

 『絶対可憐チルドレン』という超能力警察(なのかな)マンガが今『少年サンデー』で連載されていますが、原型の一つとなった作品ではないでしょうか。テレキネシス、テレポテーション、クレアボワイヤンス、テレパシイ、さらには色仕掛けの催眠など、超能力を駆使したスパイ戦はただただ楽しいの一言です。平井和正の諸作品を連想させる物語でした。最後に人類に対しての説教が入るのですが、ああ小松左京らしいなあとその部分も含めてじっくり味わえました。
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