どこから吹いてくるのか、烈風は徐々に風速を強め、世界の諸都市は次々と崩壊への一途をたどった。巻き上がる砂塵、猛威をふるう風・・・・・・。人々は抗するすべもなく、食糧と飲料水を携えて地下壕での生活を始める。波浪は海岸地帯をなめ、河川は枯渇し、火災が頻発する。世界は今や、いずこからともなく吹き募る東風の前に屈するしかないのだろうか?バラードの記念すべき処女長篇。
いやー、面白かった。
『ヴァーミリオンサンズ』は途中で挫折したので、自分には不向きな作家なのだろうと思っていましたが、これははまりました。
とんでもない強風が吹いてきて、地上での生活が困難になる。破滅ものには、こういうのもあったのか、と新鮮な驚きを感じました。
どこまでも陰々滅滅としているのですが、いつしか、それが自虐的な喜びに変わっていくという部分もあって、「ふふふ」と口の端で笑いつつ、世界の終りを眺めていました。なので、とってつけたようなラストには「んー?」と首をひねらざるをえませんでした。この調子で続けるなら全員・・・・・・とか、思ったり。ある意味、究極的ともいえる『人類皆殺し』や『霊長類南へ』と比較すると、「甘いんだよ!」と言いたくなってしまいます。
と、いうより、たぶん、これは人物造形に問題があって、類型的な善人が出てこないから、誰が助かっても同じように思えちゃうっていうのもあるかもしれませんねー。
昨日、福岡の天神地下街を朝歩いていて、もし、この世界と同じようなことが起こったら、こういう地下街に皆閉じこもって、戒厳令下、自衛隊の指示のもと、自由を束縛された生活をしなければならなくなったり・・・・・・とか、妄想してしまいました。そういえば、昨日の福岡は風が強くて、「狂風」とはいかないまでも「強風」世界でした・・・・・・とか、いらんオチをつけたり。
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