時は〈人間の再発見〉の第一世紀。シェイヨルの星が、リンゴを服の袖でこするように磨かれていた時代。銀河随一の富める惑星ノーストリリアで、ひとりの少年が地球という惑星を買いとった。少年は地球へやってきて、なみはずれた冒険を重ねたすえに、自分のほしいものを手に入れ、ぶじに帰ることができた。あんなことは一度あっただけ。二度と起こらないようにわれわれは手をうった。お話はそれだけだ。さあ、これでもう読まなくてもいい。ただ、こまかいところは別。それはこの本のなかに書いてある。ひとりの少年が出会った真実の恋と、手に汗にぎる冒険の日々が・・・・・・。
冒頭から、ものすごく引き込まれました。まるで、御伽噺のような語り口で始まる。もちろん内容も御伽噺なんだけど。
地球を買った少年・・・・・・。それも十六年の少年期を何回もやり直している。そして、ノーストリリア人の奇妙な生活様式。コンピュータ一つで、たった四時間とちょっとで、史上最も裕福になったロッド・マクバン。テレパスの能力に欠陥があるのをコンプレックスにしている彼は、感情移入できるキャラクターでした。
そして、次々に登場する聞き覚えのある名前。盗賊ギルド、ヴォマクト家、ロードジェストコースト、ク・メル、ド・ジョーンズ、『アルファラルファ大通り』のポールなどの再登場・・・・・・。様々な断片が散りばめられており、見知らぬ固有名詞には、スミスの死のために書かれなかった歴史に思いをはせる・・・・・・。
「中国、日本、フランス、ドイツで成長期を過ごし、すでに十代後半には六ヶ国語に通じていた」コードウェイナー・スミス=ラインバーガー博士の広範な知識や、複数の文化的背景が、このような壮大な世界を作り上げたのでしょうか。
物語全体が、ハートウォーミングなやさしさに包まれている。そんな、印象を受けました。とにかく・・・・・・素晴らしかった!
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