南紀・産浜の高級リゾートホテル。待遇、料理が抜群で、選ばれた紳士淑女だけが宿泊できる。作家・石坂は執筆のため、このホテルに滞在した。夜ごとのディナーとお洒落な会話、滞在客は石坂の他五名。会社役員夫妻、美貌のキャリアウーマン、地元の名士、大学助教授だった。サロン的雰囲気、完全密室の中で、三人が次々と殺された――。奇抜なトリックの謎を解く、本格推理長編。
なかなか面白かった。
筒井康隆のミステリだから、叙述トリックかな・・・・・・?と余計な期待値でもって読んでいたら違ったので少しインパクトが薄かったですね。ただ意外な犯人だったのでびっくりしました。
途中のフェミニズム論争とか「フェミニズム殺人事件」と銘打っていただけに、じっくりとその部分を読み進めました。途中で『パプリカ』の話が出てきたりして、そういえばあれも女性誌連載だけにそういう部分を意識して書いたのだろうなあと思いつつ、筒井康隆の描く女性について思いをはせました。
動機の面についていえば、あまり好きな感じではないですね。僕はオタクの例に漏れずけっこう女性を理想化しがちなので。「フェミニズム」殺人事件であるのが、最後に示されるのですが、これは批判的に見てるのかなという気がしました。石坂はけっこう筒井氏自身が投影されている感じがしましたが、これも作者の狙う効果であるのか、それともそうしたほうが書きやすかったのか、いろいろ類推してしまいました。なにしろ『文学部唯野教授』と同時期に書かれたそうですからねえ。
一章ずつノートを取りつつ読んだのですが、やはり考えて書いてるなあとか上手いなあと思うのです。隠している事実の小出しの仕方とか、最後まで含みをもたせるやり方とか余韻の残し方とか・・・・・・。お手本のようなミステリになっていて、気持がよかったです。ただマスコミに関しては、またカリカチュアされてるなあという印象がしましたが、ここまでやるやつって本当にいそうだなあと思えてきます。
筒井作品としてはあまり癖のない素直な作品だなあという印象を受けました。
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