忍者ブログ

SF素人が空想科学小説に耽溺するブログ。

モラトリアム

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ミステリの森に迷う⑨ 筒井康隆『フェミニズム殺人事件』

 南紀・産浜の高級リゾートホテル。待遇、料理が抜群で、選ばれた紳士淑女だけが宿泊できる。作家・石坂は執筆のため、このホテルに滞在した。夜ごとのディナーとお洒落な会話、滞在客は石坂の他五名。会社役員夫妻、美貌のキャリアウーマン、地元の名士、大学助教授だった。サロン的雰囲気、完全密室の中で、三人が次々と殺された――。奇抜なトリックの謎を解く、本格推理長編。

 なかなか面白かった。

 筒井康隆のミステリだから、叙述トリックかな・・・・・・?と余計な期待値でもって読んでいたら違ったので少しインパクトが薄かったですね。ただ意外な犯人だったのでびっくりしました。

 途中のフェミニズム論争とか「フェミニズム殺人事件」と銘打っていただけに、じっくりとその部分を読み進めました。途中で『パプリカ』の話が出てきたりして、そういえばあれも女性誌連載だけにそういう部分を意識して書いたのだろうなあと思いつつ、筒井康隆の描く女性について思いをはせました。

 動機の面についていえば、あまり好きな感じではないですね。僕はオタクの例に漏れずけっこう女性を理想化しがちなので。「フェミニズム」殺人事件であるのが、最後に示されるのですが、これは批判的に見てるのかなという気がしました。石坂はけっこう筒井氏自身が投影されている感じがしましたが、これも作者の狙う効果であるのか、それともそうしたほうが書きやすかったのか、いろいろ類推してしまいました。なにしろ『文学部唯野教授』と同時期に書かれたそうですからねえ。

 一章ずつノートを取りつつ読んだのですが、やはり考えて書いてるなあとか上手いなあと思うのです。隠している事実の小出しの仕方とか、最後まで含みをもたせるやり方とか余韻の残し方とか・・・・・・。お手本のようなミステリになっていて、気持がよかったです。ただマスコミに関しては、またカリカチュアされてるなあという印象がしましたが、ここまでやるやつって本当にいそうだなあと思えてきます。

 筒井作品としてはあまり癖のない素直な作品だなあという印象を受けました。
PR

COMMENT

NAME
TITLE
MAIL(非公開)
URL
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT
PASS(コメント編集に必須です)
SECRET
管理人のみ閲覧できます

TRACKBACK

Trackback URL:

カレンダー

10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

最新TB

フリーエリア

カウンター

アクセス解析

プロフィール

Copyright ©  -- モラトリアム --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]