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ミステリの森に迷う⑫ 黒岩涙香『幽霊塔』

 奇妙ないわれのある「幽霊塔」を元検事総長の丸部朝雄が購入した。「幽霊塔」には、丸部家の先祖が莫大な財宝を隠したといわれ、精巧なからくりが施されており、その複雑なからくりのせいで主人は塔の中で死んだといわれている。塔を訪れた朝雄の甥の丸部道九郎は、無人のはずの塔に入り込んでいる美人と出会う。彼女は塔の時計の螺子の巻き方を知っており、それを塔の主人である朝雄にだけ知らせたいという。彼女の左手は長い刺繍入りの手袋で覆われており、顔は仮面のような印象だが美貌はこのうえない。その女性秀子はその後、三年前にこの幽霊塔で起きた殺人事件の加害者の墓に参っていた。怪しみながらもその女性を夕餉に招待した道九郎。ここに、奇々怪々な事件が幕をあげることとなる・・・・・・。

 なんておもしろさだ!

 久々に本を夜を徹して読むということをしてしまいました。人をひきつける力がものすごい物語です。

 「本」をと書きましたが、実際には青空文庫ビューワーをスマホにダウンロードして、それで読んだのですが、画面をスライドする指が止まらない。もう、先が気になって気になってしょうがないのだ!

 その昔、読書少年だったころ、ドキドキしながらホームズやルパンを読んだ、その気持ちがもう30才直前の男の胸にビンビンよみがえるのです。次は何が起こる?なんとそうだったのか?エエッ、なんとそういうことが!驚愕の新事実が次々と明らかになるにつれて、一喜一憂、まさにジェットコースターのように昇降を繰り返しながらの読書なのです。

 あまりにも王道すぎる展開が、なんだかとても気持ちいい。謎めいた美女、過去の殺人、首のない死体、虎との対決、悪人のアジトが蜘蛛屋敷、イヤミな恋敵、裏切りの連続の婚約者、そして、なにより塔の中に隠された財宝!財宝の隠し場所を示す暗号をといていく様子には大興奮です。

 初期の翻訳ものなので、外国人の名前がすべて日本人名になっているのも新鮮で、舞台は英国であるのに、名前はすべて純和風。ヒロインの名前は秀子、婚約者はお浦、殺されたおばあさんはお紺、お紺を殺した下手人は夏子・・・・・・。なんか、ギャップがあってステキ。大衆文芸らしく、文章も読みやすく、現代人でもやすやすと理解できます。

 宮崎駿が『カリオストロの城』の時計塔の参考にもしたとされる作品。無料でダウンロードできるのでぜひお楽しみあれ。
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死霊の王国

  • by ヌル
  • 2013/02/18(Mon)20:39
  • Edit
今晩は、A・T様。しばらくです。

『幽霊塔』は、僕もタイトルは聞いたことがあります。確か、江戸川乱歩が翻訳した本だったと思います。
時計塔に隠された財宝―ミステリーの定番ですね。

折角なので、僕もお勧めのミステリーを一冊。加納一朗氏の本格SFホラー、『死霊の王国』と言う作品をご紹介します。
事の始まりは、深夜の交通事故。深夜タクシーが、人を轢いたのです。運転手はすぐに警察に通報しますが、彼と駆けつけた警官の目前で、恐るべき現象が起きました。轢かれた男が、見る見るうちに腐敗が進み、あっという間に白骨化したのです。しかも検死の結果、この白骨は既に死後一年以上が経過していることが判明します。
医学生の青年・小谷清一郎は、恩師の法医学者・津村博士とともに、死体を調べますが、驚くべきことに、ここ一年の間に、病院や医大で、解剖用の死体が盗まれる事件が、八件も起きていたのです。しかも清一郎の弟・猛も、霊柩車を使って死体を盗む男たちを、偶然目撃しました。やがて、津村博士が、何者かに誘拐されてしまいます。
博士の残した手掛かりを追っていた清一郎たちは、事件の背後に、戦時中、旧日本軍が起死回生を賭けて行った、神をも恐れぬ研究が関係していることを突き止めます。
果たして、博士は無事なのか? そして、犯人の抱く、恐るべき野望とは? 半世紀の時を経て、戦争の亡霊が現代に蘇ります!


この作品は、去年神保町にて購入したのですが、ユーモアSFで有名な加納氏が発表した、本格SFホラーです。今ではホラーの定番になった、ある怪物が、物語の核となっています。ジュブナイルでありながら、手抜きは一切無し! ミステリーとしても、大変よく出来た作品です。
現在、この作品は電子書籍で読むことが出来ます。今までとは違った加納氏の一面を見れますよ。お勧めです!

それでは、お休みなさい。

Re:死霊の王国

  • by A・T
  • 2013/02/23 06:39
 ミステリーSF、いいですね。

 『死霊の王国』ときくと、一瞬伊藤計劃の『死者の帝国』を思い出しました。あれは、フランケンシュタインの怪物でしたね。『死霊の王国』のモンスターはいったい何者なのでしょう。気になります。

 乱歩版の『幽霊塔』は今読んでいます。連載時の挿画もついた創元推理文庫でこちらも血湧き肉踊る活劇になりそうな予感です。ではでは。

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