批評理論についての書物は数多くあるが、読み方の実例をとおして、小説とは何かという問題に迫ったものは少ない。本書ではまず、「小説技法篇」で、小説はいかなるテクニックを使って書かれるのかを明示する。続いて「批評理論篇」では、有力な作品分析の方法論を平易に解説した。技法と理論の双方に通じることによって、作品理解はさらに深まるだろう。多様な問題を含んだ小説『フランケンシュタイン』に議論を絞った。
小説とはいったいなんなのだろう?文学理論とはいったいなんなのだろう?そう思っている人にうってつけの入門書だと思います。
ジョナサン・カラー(たしか巽孝之さんの先生)の『1冊でわかる文学理論』という入門書を読んだ上で、さらに入門書の本書を読みました。まあ、ぶっちゃけ1冊では理解しかねます。特にポスト・モダンのところはジャック・デリダという哲学者のいってることがなかなかわかりにくい。「ディコンストラクション」ってなんじゃらほい。
とまあ、それは置いといて、シェリーの『フランケンシュタイン』を使っての実践的な批評理論の使用法を解説していただいてます。これがわかりやすいし、面白い。「語り」やテクストの生産状況など、多方面から『フランケンシュタイン』という小説を解剖していきます。実は僕『フランケンシュタイン』読んでないのですが、面白そうなお話ですねえ。
さて、SFファンとして気になるのは批評理論の中の「ジャンル批評」と呼ばれるやつです。ジャンル批評の中で『フランケンシュタイン』は4つのジャンルとして批評されています。①ロマン主義文学②ゴシック小説③リアリズム小説④
サイエンス・フィクションです。ここでSFについてどう書かれているかは、後に「SF研究」として考えてみたいのですが、ここではSF批評家として三人の名前が挙げられています。ピーター・ニコルズ、文献だけですがオールディス、そしてダーコ・サヴィンです。「フランケンシュタインはSF」の指摘の根拠はオールディスの文献からとられています。
ちなみに僕の好きな批評は文化批評、いわゆるカルチュラル・スタディーズと呼ばれるやつで、非常に楽しいです。『フランケンシュタイン』という小説が、いかにして大衆の中に取り入れられていったか、その変遷を本書では図画や写真で示してくれますが、とても楽しいですよ。
勉強にもなり、楽しめる、一石二鳥の本でした。
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