八犬士活躍後百五十年。若き城主里見忠義が快楽を貪った代償に、家宝の「忠孝悌仁義礼智信」の八顆の珠が「淫戯乱盗狂惑悦弄」にすり替えられた。これぞ、里見家取潰しを狙う本多正信――服部半蔵の策謀。甲賀卍谷で忍法修行した、八犬士の末孫八人vs半蔵指揮下伊賀者の女忍者八人の熾烈果敢な戦いやいかに!
いやあ、面白いですなあ。
伊賀忍者対八犬士の末孫ということですが、孫たちにやる気がありません。「そんな面倒なことやってられるか」という雰囲気で、みんな好き勝手なことをやっています。まず、ここが面白い。ところが、初恋の里見家の奥方が出てくるや否や急展開。奥方様のために全員が命を賭して伊賀の女忍者に挑んでいくのです。
一年という期間だけ伊賀で修行したというのがこの物語のミソでもあります。それぞれが半人前の、或いは別の場所で覚えてきた忍術にて、いかに凄腕の相手忍者と渡り合うか。必然、命を賭けるか、削るかのギリギリの勝負となっていき、壮絶さ、凄絶さが物語にさらに加わっていくのです。
犬好きにとっては、物語を彩る(?)八匹の白い犬八房がたまりません。忍犬です。さらには物語を動かしていく案内役にもなってくれます。イメージとしては『もののけ姫』に登場するモロの子ども達を思い浮かべていました。途中でヘマをする姿もまた可愛い。
一番お気に入りの忍法は、犬坂毛野の使う「忍法魔羅蝋燭」。いや、読んで字のごとくなのですが、影となって相手を襲うという視覚的イメージが非常にわく忍術です。それを作るまでの工程もなかなかまた楽しかったり。
江戸城での最終決戦は百花繚乱。踊り舞う女たち、飛び散る血しぶき、うなる忍術、ほとばしる男女の叫び・・・・・・。血沸き肉踊る大人の冒険物語、そして、風太郎流八犬伝でした。
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