人間たちにいいようにされている農場の動物たちが反乱を起こした。老豚をリーダーにした動物たちは、人間を追放し、「すべての動物が平等な」理想社会を建設する。しかし、指導者となった豚たちは権力を欲しいままにし、動物たちは前よりもひどい生活に苦しむことになる・・・・・・。ロシア革命を諷刺し、社会主義的ファシズムを痛撃する二十世紀のイソップ物語。
素晴らしい。
緻密な構成で練られた物語。理想を追い求めた形で起こされた動物の革命が、権力の欲望のために挫折していく様子を描く。特に豚が人間と区別のつかなくなるラストは背筋が凍るような思いになった。
自分はソビエトの歴史には強くはありません。しかし、人間というもの、また、国家というものの普遍性を得た物語なので、それぞれの人物の行動があまりにも納得できて、完璧に近い小説のように思いました。
具体的なモデルとしては、メージャー爺さん→レーニン、ナポレオン→スターリン、スノーボール→トロツキー、という風になるようです。追放されたスノーボールが可哀想でした。
途中、七戒が書き換えられるところや、育てた九匹の犬が国家警察になって登場するところなど、小説のテクニックやアイデアがこれまた巧いと思います。諧謔味も多分に織り交ぜられ、思わずニヤリとする場面も多々。「しっぽ美化連盟」など、やたらに委員会を作るところなど笑いました。
表題作の他に「象を射つ」「絞首刑」「貧しいものの最期」を収録。いずれも社会の矛盾点を突いた物語で読み終わった後、胸に錐が突き立ったような気分になりました。
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COMMENT
SF紹介 ―時の顔―
『動物農場』、読みました。メルヘンチックなタイトルの割には、シビアな物語みたいですね。
ここのところ、海外SFばかり読んでいたので、久々に国産SFを読破しました。小松左京の『地には平和を』です。今回はその中でもお気に入りの、『時の顔』をご紹介します。
舞台は遠い未来。タイム・パトロールに所属する主人公の親友で、彼の上司の息子でもあるカズミが、原因不明の奇病で苦しんでいました。優れた未来の衣料も、この病にはなんの効果もありません。上司はカズミは本当の息子ではなく、過去の世界から助け出した子だと告白します。だとすれば、カズミの病因は過去にあるのでは?
主人公は親友を救うべく、江戸時代へ向かいます。しかしそれは、人間の憎悪と時空の魔力が渦巻く、恐るべきたびと鳴ります。果たして、彼は親友を救うことが出来るのでしょうか?
タイム・トラベル、一卵性双生児のテレパシー、丑の刻参りなど、一見繋がりのない手がかりが、最後に見事繋がった瞬間は、とてもビックリしました。正直、広瀬正の『マイナス・ゼロ』の原型のような、完成度の高い作品です。さすがは、小松大先生と言いたくなったほどです。
角川ハルキ文庫で読めるので、ぜひ一度読んで下さい。
まだまだ、暑い日が続きますね。ゲリラ豪雨にはご用心を!
ではまた。
Re:SF紹介 ―時の顔―
ハルキ文庫の小松左京は積読にしていて、緑色の一角ができているので、早々に手をつけたいものです。今から読むのが楽しみです。