「東京と大阪では、受け方なり、どこで笑うかということはだいぶ違いますで。・・・・・・こっちの芸人は『もうひと押し』というところがある。充分受けてるのに、もうひとえぐりしたいという気持ちがあるんやな」(桂米朝)
「僕は喜劇映画のドタバタ、スラップスティック、あれを小説でやろうとしたわけですよ。・・・・・・それはドタバタ以外の小説を書く場合でも、ずいぶん役に立ってます」(筒井康隆)
片や落語界の重鎮、片や日本を代表するSF作家。ともに「笑い」を追求してきた二人が、漫才や映画、歌舞伎にまで話題を広げ、薀蓄を披露しあう様は、さながら競演会だ。
興味深い、というのが読んでみての印象。
落語はSFに大きな影響を与えている芸のようです。僕の知るところでは筒井康隆、火浦功、横田順彌、小松左京、半村良、とり・みきの作品に落語の語り口の作品やアイデアを拝借した作品があったと思います。
最近注目を浴びている落語ですが、『タイガー&ドラゴン』や『しゃべれどもしゃべれども』、或いは『GO』もだったかな?落語は古い笑芸というイメージから新たなイメージを獲得しつつあるようです。テレビでネタ番組が恒常的に見られるようになった昨今、笑芸が見直されているのは確かなようです。
かつて「笑い」は卑賤のものとして扱われていました。武士は笑わず、しかめつらをしていなければならなかった。上役がこけたことを笑ったお陰で
切腹させられた武士までいるそうですから、その真面目ぶりは現代の僕たちから見れば恐ろしくもあり、逆に滑稽です。しかし、お上もついに笑いを認めたようで桂米朝は文化功労賞、筒井康隆は紫綬褒章を貰ったことがこの『笑いの世界』という対談の契機となったとは、なにか感じ入るところがあります。
お話の中心は戦前・戦後の映画や、落語のお話など、二人の笑いを醸成してきた笑い文化、自分たちの仕事です。歌舞伎や落語のSF的な作品なんかも取りざたされているので、そういったものがお好きな方は必見です。個人的には自来也の元型である歌舞伎「天竺徳兵衛」、「地獄八景亡者戯」「こぶ弁慶」「あたま山」などの落語はぜひとも見たいものです。
SFファンとして見れば途中で筒井さんが「SFの人が何であんなにみんな短命なのか。」と嘆いているシーンが非常に印象的でした。
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