『邪眼鳥』は、過去と現在の境目を、段落や行明けなどを行わずに、類似した映画作品を巧みに使って移行し、新たな描写法を開拓している。『夏の初恋』という曲を各所各所で印象的かつ幻想的に使い、過去への入り口にしていることや、登場人物たちの心情描写の緻密さに、ぐいぐい引き込まれていく感がある。家族というのも一種のグループであり、そこにはドロドロとしたものが渦まいている。そのグロテスクさを筒井康隆らしい筆致で描いた作品でした。タイムトラベルものとしても読める作品。
『RPG試案――夫婦遍歴』は、正直よくわからなかったけれど、仮想現実の社会に組み込まれていく様子が、先日読んだ『驚愕の荒野』と似た感覚。最後の連続する笑い声が不思議。これも幻想小説であり、頭の中の感覚が少しおかしくなりかける。
両方とも読者を困惑させ、文学の森に迷い込む不思議な作品。
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