SF素人が空想科学小説に耽溺するブログ。
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支倉常長の物語です。常長というと歴史の教科書に派手な格好で絵が出ていたのを思い出したりするのですが、この物語に出てくる「長谷倉六衛門(常長)」はとっても地味な人です。
伊達政宗の命により、スペイン王のもとに親書を運ぶわけなのですが、政治的な理由から、あとでどうにでも処分できるような身分の低いものを選んでスペインに送り込むわけなんです。冒頭の六衛門の領地の様子もかなりくらーい感じなのですが、道中もずーっとこの男は地味で暗いまま進んでいきます。
で、「侍」という題名なのですが、主に心理が描かれるのは宣教師のベラスコです。野心的な男と紹介されていますが、戦略的な人なのでしょう。聖人というふうにはいえませんが、僕はこのように目的のためにあらゆる手段を使いつつ邁進する人物が好きなので、けっこう感情移入をして読んでしまいました。
印象的なシーンは二つあって、ベラスコの所属するボーロ会とペテロ会との対決の席で、日本で禁教令が出たとの手紙を読み上げるシーン。そして、西九助が思わぬ言葉を口走ってしまうシーンです。この残酷な二つのシーンは地味なこの物語の中で、実にはっとさせられるものがあってよかったです。
常長がキリストについて理解する場面、ベラスコの言葉など一番最後には感動するシーンが待っています。最初はあまりの地味さにどうなることかと思いましたが、読み終えた後には確実に心の中に食い込んでくる物語でした。
COMMENT
SF紹介 ―東京2065―
お久し振りです。長らくご無沙汰でしたね。
暑い日が続きます。ぼくの家では朝と夕方に打ち水をして、涼を得ています。まだ梅雨明けはしませんが、一度ザーッと降って欲しいものです。
さて、久々のSF紹介は、さっっき読破したばかりの生島治郎著『東京2065』をお贈りします。
主人公・日高嶺二は、国際秘密警察の凄腕捜査官。ある犯罪組織に潜入中の彼に与えられた新たなる指令は、国際指名手配中のロボット密造者・ハインリッヒ・クサカベを逮捕せよというものでした。
彼は暗黒街にて沢山の非合法ロボットを開発しては、色々な犯罪組織に売り歩いているのですが、そいつが日高のいる組織に、殺人ロボットを売りつけようとしているのです。そうなっては、世の一大事です。しかも始末の悪いことに、ハインリッヒは取引に邪魔な日高を始末すべく、その全ての才能を注ぎ込んだ暗殺ロボットを送りつけてきます。果たして、最後に笑うのは日高か、それとも?
生島治郎さんの小説は今回初挑戦ですが、以前読んだ都筑道夫のアクション小説のように、奇抜なアイディア、胸のすくようなアクション、独特のブラック・ユーモアの凝縮された作品です。特にハインリッヒの恐るべきロボットたちと、それを次々と倒す日高の強運振りが見物です。
また、表現作の他に、人工冬眠のためにチンパンジーの世話をする飼育員を描いた『前世』や、昭和生まれの人間たちがクーデターを起こす『世代革命』など、絶妙のユーモア漂う短編揃いです。ぜひとも、復刊されて欲しい名作だと思います。
ではまた。
Re:SF紹介 ―東京2065―
「前世」「世代革命」は読みまして、特に「世代革命」は発想が非常に面白いなあと思うと共に、当時の若い世代の鬱屈が伝わってくるようでした。
「東京2065」とは題名を見るかぎり、光瀬龍みたいですね。最近、あまりSFらしいSFを読んでいないので、久々に読んでみたくなりました。