苛烈な第一次世界大戦。イタリア軍に身を投じたアメリカ人青年フレドリックは、砲撃で重症を負う。病院で彼と再会したのは、婚約者を失ったイギリス人看護師キャサリン。芽生えた恋は急速に熱を帯びる。だが、戦況は悪化の一途を辿り、フレドリックは脱走。ミラノで首尾よくキャサリンを見つけ出し、新天地スイスで幸福を摑もうとするが・・・・・・。現実に翻弄される男女の運命を描く名編。
面白い!
全然構えなくても読めてしまいます。全然難しくない、むしろ古典的悲劇の要素が強い作品でエンターテイメントだと思いました。前線での戦闘、病院での主人公とキャサリンとの出会い、撤退とイタリア軍将校の粛清からの脱走・・・・・・。戦争という常に死を意識する状況でのスリルで物語にぐんぐん引き込まれていきました。
主人公の性格付けというのが僕は大好きなのですが、どこかなにかを諦めたような、信仰はしたいのだけれどもそれを信じきれないというような誠実さと皮肉さを持ち合わせたキャラクターで、それだけでもなんだかしびれてしまうのです。神父と交わされる幾つもの会話が非常に象徴的に思えたのですが、結局「無」という信仰に帰依している主人公の姿が浮き彫りにされているようで心にしみじみときてしまうのです。
キャサリンという女性も非常に魅力的で、最初は冷たくされるのだけれど徐々に主人公になびいていくさまが僕には面白かったです。ああ、ツンデレ的要素があるなあと。さすがに外国で働くだけのバイタリティを持っている人物として描かれているだけに、最後の脱出行でも積極的に動き、男性的な女性だなあと思いました。素敵な女性です。ただ、別に僕には差別感情なんてないですが、新訳ではすべて「看護師」というふうになっていて「看護婦」ではないんですね。そこで非常に戸惑いがあったのですが、原作では「ナース」という単語ではないのかなあ。時代状況を改変してまで言葉を変えるのはどうかと思ってしまうのですが、詳しい方いらっしゃいましたら教えてください。
それだけに悲しいラストが非常に印象に残ります。主人公の悲痛な叫びは抑揚をそんなに感じさせない自制されたというか、諦観的な語りから浮き上がっているだけに余計に心にずしりときました。今、『誰がために鐘はなる』を読んでいますが、こちらも戦争もので非常に面白いです。けっこうな厚さの本なのですが、活字の大きさもあってか、非常に速く読み進めることができました。この作品も確かに名作だなあと思います。
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